【2026年9月】外食だけ蚊帳の外|値上げ4,923品目の実態と対策5選

仕入れ伝票の数字が、また上がっていませんか。

調味料も、冷凍食品も、包材も上がりました。それでもメニュー表の数字は、去年から動かせていない。その感覚は、気のせいではありません。統計が「外食だけ置き去りになっている」ことを、はっきり示しています。

この記事では、2026年9月の値上げの実態と、外食だけが取り残される仕組みを公的な数字で確かめます。そのうえで、店主が明日からできる手を5つ挙げます。

この記事を読んでわかること

・2026年9月の食品値上げ4,923品目の内訳と、値上げが起きている理由。
・食料全体が3.5%上がるなかで、外食だけが1.7%にとどまっている事実。
・惣菜(中食)にすら価格改定で後れを取っている理由。
・最低賃金4.9%上昇との差が、これから利益をどう削るか。
・上げやすい品目の選び方と、告知から効果測定までの5つの手順。


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9月に起きたことを、数字で押さえる

帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2026年9月の飲食料品の値上げは4,923品目でした。単月で4千品目を超えたのは2026年で初めてです。2023年10月(4,758品目)以来の水準になります。

分野品目数主な中身
調味料1,959しょうゆ、マヨネーズ、食酢
加工食品1,848冷凍食品、チルド、すり身製品
酒類・飲料466清涼飲料、一部の酒類

最多が調味料である点に注目してください。しょうゆ、マヨネーズ、酢は、ほぼ全メニューの原価にじわじわ効いてきます。

「4,531品目」という数字を見かけたら

7月31日時点の集計では、9月の値上げは4,531品目と発表されていました。その後の調査で392品目増え、4,923品目に上方修正されています。同じ月の話でも、発表時期によって数字が変わります。引用するときは公表日を確認してください。

値上げの理由

同調査では、値上げ要因として原材料高が90.7%、エネルギーが65%、中東情勢の影響が27.8%と示されています(複数回答)。2026年通年では、判明分だけで1万9千品目を超えました。2025年の2万品目を上回るのは、ほぼ確実な情勢という見方が示されています。

ここからが本題。外食だけが上げられていない

総務省の消費者物価指数(2026年7月分・2025年基準)を見ると、置き去りの構造がはっきり出ます。

分類前年同月比
総合+1.9%
食料(全体)+3.5%
生鮮食品+7.0%
生鮮魚介+12.4%
菓子類+6.1%
調理食品(惣菜・弁当)+3.5%
外食+1.7%

食料全体が3.5%上がっているのに、外食は1.7%。半分にも届いていません。

はな
はな

外食が上がってないなら、お店にとってはいいことなんじゃないの?

たかし
たかし

逆なんだ。仕入れは3.5%上がってるのに、
売値は1.7%しか上げられていないということだよ。

惣菜にも負けている

見落とされがちなのが、調理食品が+3.5%という点です。スーパーやコンビニの惣菜・弁当がこれにあたります。同じ「調理された食事」でありながら、持ち帰りの惣菜は3.5%上げられて、店で出す食事は1.7%しか上げられていません。差は1.8ポイントです。外食は、中食にすら価格改定で後れを取っています。

それでも、上げている店は上げている

外食が一律に上げられないわけではありません。同じ統計で、外食のハンバーガーは+13.2%です。外食全体が1.7%にとどまるなかで、13.2%上げている品目がある。ここに、後半で述べる打ち手のヒントがあります。

なぜ外食だけ上げられないのか

理由は3つあると私は考えます。

理由1:値札が客の目の前にあり続ける

メーカーの値上げは、店頭に並ぶ頃には他の商品と紛れます。パッケージが変わっていれば、前の価格と比較すらされません。飲食店は違います。メニュー表の数字は、来店のたびに同じ人の目に触れます。780円が880円になれば、常連さんは必ず気づきます。

理由2:値上げの相手が「取引先」ではなく「客」

製造業や卸売業の値上げは、取引先との交渉です。経済産業省が2026年3月に実施した価格交渉促進月間のフォローアップ調査では、全業種の価格転嫁率は54.2%でした。コスト別では原材料費55.7%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%です。半分は通っています。一方、飲食店の値上げに交渉相手はいません。告知して、来るか来ないかを待つだけです。

理由3:人件費が最も転嫁しにくい

上の調査で、労務費の転嫁率は50.0%でした。原材料費より5.7ポイント低くなっています。飲食店は人件費の比重が高い業態です。最も転嫁しにくいコストが、最も重くのしかかる構造になっています。

実際、店主自身がそう答えている

日本政策金融公庫の生活衛生関係営業の景気動向等調査(2026年4〜6月期)では、経営上の問題として次の順で挙げられています。

経営上の問題は、「仕入価格・人件費の上昇分を価格に転嫁できない」が61.1%と最も高く、次いで「顧客数の減少」(40.6%)、「店舗施設の狭隘・老朽化」(20.5%)の順となった。

客が減ることより、値上げできないことのほうが問題視されています。なお、この調査は飲食業のほか理美容業やホテル・旅館業なども含む、生活衛生関係営業全体の数値です。


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差はこれから、もっと開きます

ここが一番の問題です。人件費の上昇は、これから本格化します。厚生労働省の中央最低賃金審議会は2026年7月28日、地域別最低賃金の引き上げの目安を答申しました。Aランク54円、B・Cランク56円です。目安どおりに改定された場合、全国加重平均は1,176円となります。上昇額は55円、引き上げ率は4.9%です。

項目上昇率
最低賃金(2026年度・目安ベース)+4.9%
外食の価格(2026年7月)+1.7%

人件費が4.9%上がるのに、価格は1.7%しか上げられていません。差は3.2ポイントです。この差は、そのまま利益から引かれます。改定は各都道府県で10月ごろに発効するため、影響が出るのはこれからです。

上げられないまま続けると、どうなるか

帝国データバンクの調査では、2026年上半期の飲食店の倒産は473件でした。前年同期の458件から15件増え、過去最多を更新しています。増加は4年連続です。

値上げを我慢することは、客を守る行為に見えます。けれど数字は、我慢した先に店が残らないことを示しています。

18年やってきて、正直に思うこと

私は19歳から飲食の世界にいて、独立して18年目になります。

たかし
たかし

正直、私も長いあいだ値上げを先送りしてきたんだよ。
頭では分かってても「あの人が来なくなったら」って顔が浮かぶんだ。

たかし
たかし

実際に上げてみたら、離れた人は思ってたより少なかったよ。
理由を先に伝えた相手ほど、むしろ残ってくれたんだ。

明日からできる5つの手

手順1:まず「上げなかった場合」を計算する

値上げの判断は、上げた場合の試算だけでは決まりません。このまま据え置いた場合の年間の減益額を先に出してください。原価率が3ポイント上がった店なら、月商300万円で年間108万円が消えます。この数字を見てから決めると、迷いが減ります。

手順2:全品ではなく、上げやすい品目から上げる

外食全体が1.7%でも、ハンバーガーは13.2%上がっています。上げられる品目は確かに存在します。

優先度条件理由
原価上昇が大きく、注文数が中位説明がつきやすく、客離れの影響が小さい
他店にない独自メニュー価格を比較する相手がいない
ドリンク・サイド単価が低く、上げ幅が絶対額で目立たない
看板メニュー値上げの印象が店全体の評価になる
ランチの目玉商品近隣店と直接比較される

看板メニューを最後に回すのが要点です。店の印象を決める1品は、いちばん最後に、いちばん小さく動かします。

手順3:値上げ幅は「原価上昇分」で説明できる範囲にする

しょうゆ・マヨネーズ・酢が上がったなら、それを使うメニューを上げる。理由と対象が一致していれば、説明が短く済みます。関係のないメニューまで一律に上げると、説明できなくなります。

手順4:実施日と新旧価格を、2週間前に告知する

告知文に必要なのは4つだけです。実施日、対象メニュー、新しい金額、予約済みの扱い。理由は最後に2行で足ります。長い釈明は、かえって値上げを大きく見せます。

告知文に入れる4項目

1. 実施日(○月○日から)
2. 対象メニュー(全品か、一部か)
3. 新旧の金額(旧価格も併記する)
4. 予約済みのお客さまの扱い(旧価格か新価格か)

手順5:変更後30日で、客数と粗利を一緒に見る

値上げの成否は売上では判断できません。客数が減っても粗利が増えていれば成功です。30日後に、客数・客単価・粗利の3つを前月と並べてください。数字を見ないまま「やっぱり早かった」と後悔するのが、いちばんもったいない終わり方です。

値上げ当日までにやる、現場の準備

告知だけで終わらせると、当日に現場が混乱します。価格が変わる箇所は、思っているより多くあります。

価格を直す場所のチェックリスト

・店内メニュー表・卓上メニュー・裏面のドリンクリスト
・店頭の看板・のぼり・ランチの立て看板
・レジ・POS・券売機の設定(当日の開店前に必ず動作確認)
・デリバリーやテイクアウトの掲載価格
・グルメサイト・自社サイト・SNSの固定投稿
・予約済みのお客さまへの案内文

特に見落としやすいのが、グルメサイトの古い価格です。店内は新価格なのにネットが旧価格のままだと、お客さまは「話が違う」と感じます。

スタッフへの伝え方

値上げの理由を最初に聞かれるのは、店主ではなくホールのスタッフです。返答を一言にそろえておいてください。「仕入れが上がったため、○月から改定させていただきました」。これだけで十分です。スタッフが謝りすぎると、値上げが「悪いこと」として伝わります。謝罪ではなく報告の口調でそろえるのが要点です。

はな
はな

「高くなったね」って言われたら、なんて返すのが正解なの?

たかし
たかし

「そうなんです、仕入れが上がって」で十分。
言い訳を足すほど高く感じさせてしまうんだ。

値上げと同時にやると、客離れが減ること

値上げは「引き算」に見えます。同じタイミングで小さな「足し算」を1つ添えると、印象が変わります。大がかりな施策は要りません。器を変える、付け合わせを1品足す、提供時に一言添える。原価をほとんど動かさずにできることで十分です。

常連さんには、告知より先に口頭で伝える

張り紙で初めて知るのと、店主から直接聞くのとでは、受け取り方がまったく違います。週に何度も来てくださる方には、告知の前に「来月から少し上げさせてもらいます」と伝えてください。先に知らされた人は、味方になってくれます。


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値上げの効果を、30日後にどう測るか

感覚で判断すると、たいてい「失敗した」と感じます。忙しさは変わらないのに、常連さんの顔が1人欠けると強く印象に残るからです。見る数字を3つに絞ってください。

指標見方判断
客数前月同曜日と比べる5%程度の減少は想定内
客単価値上げ幅どおり上がったか上がっていなければ注文構成が変わっている
粗利額売上ではなく粗利で見る増えていれば成功

客数が減っても粗利が増えていれば、値上げは成功です。売上だけを見ると、正しい判断を見誤ります。

よくある質問

Q. 値上げ幅は何%が妥当ですか
一律の正解はありません。判断の起点になるのは、自店の原価率が何ポイント上がったかです。ただ、外食全体が1.7%、最低賃金が4.9%という数字は目安になります。上昇したコストを説明できる範囲に収めるのが基本だと私は考えます。

Q. 何回にも分けて少しずつ上げるのはどうですか
回数が増えるほど、告知と現場の手間も増えます。そのたびにお客さまは価格の変化を意識します。年に何度も動かすより、年1回にまとめて、そのぶん理由をきちんと伝えるほうが伝わりやすいと感じています。

Q. 量を減らして価格を据え置く方法はどうですか
短期的には有効に見えます。ただ、常連さんは量の変化に気づきます。黙って減らすと「ごまかされた」と受け取られる可能性があります。減らすなら、価格を据え置いた理由とセットで伝えるほうが安全です。

Q. 常連さんが離れるのが怖くて踏み切れません
その不安は当然だと思います。ただ、据え置いたまま店が続けられなくなれば、常連さんは行き場所を失います。まずは手順1の「上げなかった場合の年間の減益額」を紙に書いてみてください。数字が出ると、怖さの正体がはっきりします。

はな
はな

結局、今日いちばん最初にやることって何になるの?

たかし
たかし

据え置いた場合に1年でいくら減るか、紙に書くこと。
それだけで次が決まるよ。

まとめ

  • 2026年9月の食品値上げは4,923品目。最多は調味料の1,959品目で、ほぼ全メニューの原価に効く
  • 消費者物価指数では食料全体が+3.5%に対し、外食は+1.7%。惣菜(+3.5%)にも後れを取っている
  • 全業種の価格転嫁率は54.2%だが、飲食店には交渉相手がいない。最も転嫁しにくい労務費の比重も高い
  • 2026年度の最低賃金は+4.9%の見込み。価格の+1.7%との差3.2ポイントが、そのまま利益を削る
  • 生活衛生関係営業の61.1%が「価格転嫁できない」を経営上の最大の問題に挙げている
  • 2026年上半期の飲食店倒産は473件で過去最多。4年連続の増加

外食が置き去りにされているのは、店主の努力が足りないからではありません。値札が客の目の前にあり、交渉相手がいないという構造の問題です。

構造の問題である以上、気合いでは解決しません。けれど、構造を知っていれば、上げられる品目から順に動かせます。据え置いた場合の年間の減益額を、1枚の紙に書いてみてください。今日できるのはそれだけですが、次の判断はずいぶん軽くなります。

出典一覧

資料の確認日は2026年9月5日です。統計は対象期間を明記して引用しています。原価の計算例は本記事のための仮定であり、実在の店舗の数値ではありません。

資料名発行元
「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年9月帝国データバンク
「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年8月帝国データバンク
2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年7月分総務省統計局
消費者物価指数 全国(最新の月次結果)総務省統計局
令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について厚生労働省
価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果経済産業省
生活衛生関係営業の景気動向等調査結果(2026年4〜6月期)日本政策金融公庫
「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)帝国データバンク
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