
2026年8月、全品390円均一で知られる鳥貴族が、創業以来はじめて「お子様プレート」をグランドメニューに加えました。
「居酒屋なのに、子ども向け?」そう思った方も多いはずです。
しかしこれは思いつきの施策ではありません。
外食業界全体が今、ファミリー層へと大きく舵を切っている!その象徴的な出来事です。
私は19歳から飲食の世界に入り、居酒屋を独立開業して18年目になります。
この記事では、なぜ今「子連れ歓迎」なのか、データで背景を読み解き、自分の店でファミリー層を狙うべきか、どう実践すればいいのかまで、現場目線でまとめます。
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・鳥貴族「お子様プレート」導入の中身と、業界全体の動き。
・居酒屋がファミリー層を狙わざるを得ない4つの理由(客数・アルコール離れ・客単価・地方商圏)。
・現役居酒屋店主が感じる、子連れ客のメリットとリスク。
・今日から始められる5つの実践ポイント。
居酒屋が「子ども」に向き合い始めた
実際に起きていること
鳥貴族が2026年8月1日から導入したキッズメニューは、次のような内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | お子様プレート(2種類) |
| 価格 | 390円(全品均一価格を維持) |
| 内容 | 唐揚げ or 焼鳥+ポテトフライ+赤ウインナー+ふりかけご飯 |
| 特徴 | 味付け・大きさは通常メニューと同じ/大人でも注文可能 |
鳥貴族は導入の背景について「家族連れや女性の利用が増えていることから、こうした客層のニーズに応えるため」と説明しています。
さらに同社は、キッズメニューに続いてチキンハンバーグを投入するなど、ファミリーレストラン的な客層の取り込みを本格化させています。

鳥貴族って「大人の店」ってイメージだったから意外。
串カツ田中も同じ流れなの?

そうなんだよ、串カツ田中は早くから成果を出してる。
業態全体のトレンドが表に出てきたって感じだね。
なぜ「大人の店」がファミリーを狙うのか(4つの理由)
客数が伸びない——売上は「値上げ」で作られている
外食産業の市場規模は2025年に35兆7,116億円(前年比3.5%増)と回復基調です。
しかし、中身を見ると事情が違います。
| 指標 | 前年比 |
|---|---|
| 売上 | 107.3% |
| 客単価 | 104.3% |
| 客数 | 102.9% |
売上の伸びの多くは「値上げ」によるもので、客数の伸びは限定的です。
これ以上の値上げが難しくなれば成長が止まります。
だからこそ「新しい客層を開拓する」必要に迫られているのです。
若者のアルコール離れ——「飲む客」が減っている
居酒屋のビジネスモデルは長らく「アルコールで利益を取る」形でした。
しかし、その前提が崩れています。
- 週3回以上飲酒する習慣飲酒者(男性):1989年51.5% → 2019年33.9%
- 「飲酒習慣がある」割合:20代男性14.5%・20代女性6.5%(全体平均の約3分の1)
- 20代の「ほとんど飲まない/やめた/飲めない」を合わせると、男性の約半数、女性の約6割がアルコールから離れた生活
さらにノンアルコール飲料の市場規模は15年前の約6倍に拡大。
「あえて飲まない(ソバーキュリアス)」という価値観も広がっています。
飲まない客が増えるなら、飲まない客でも成立する売り方が必要で、その答えの一つがファミリー層です。
ファミリー層は「客単価が高い」
見落とされがちですが、家族連れは1組あたりの単価が高いという強みがあります。
- 大人2名+子ども2名=4名分の注文
- 子どもがいるとソフトドリンクの注文が増える
- 「せっかくの外食だから」と品数が増えやすい
一人客・二人客に比べ、1テーブルあたりの売上が大きいのです。
地方では「ファミリーを外すと商売にならない」
これは現場の切実な声です。
動画のコメント欄でも、経営の実感としてこう指摘されていました。
独身者、年配者、夫婦のみの世帯だけを相手に成立するのは大都市繁華街にあるお店のみ。人口15万人未満だとファミリー層を逃したら全く商売として成立しない。
小学生の子どもがいる夫婦が「留守番させて2人で居酒屋へ」というのは現実的ではありません。
一緒に行ける店でなければ、そもそも選択肢に入らないのです。
見落とされがちな「長期的なメリット」
短期の売上以上に大きいのが、将来の常連客を育てられるという点です。
小さい頃から馴染んでると、大人になっても行くね。
子どもの頃に家族と行った店は、記憶に残り、大人になってから自分の意思で選ぶ店になります。
ファミリー対応は、10年後・20年後の顧客基盤への投資という側面を持っています。
また、中国では「シックスポケット」(両親+祖父母2組の計6つの財布が一人の子どもに向く現象)という言葉があります。
日本でも祖父母世代が孫のために財布を開く場面は多く、子ども1人の来店が3世代の来店につながる可能性があります。
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18年やってきて感じる「子連れ客」のリアル

たかしのお店では、実際に子連れのお客さんが増えてる実感ってあるの?

子連れのお客様は来店が早くて、20時過ぎには帰るから常連さんとぶつからないんだ。
回転も1回増えて、けっこう助かってるよ。
一方で、デメリットも正直あります。
子供がぎゃあぎゃあいってたら二度と行きません
呑み助は、ますます居酒屋から足が遠のくなあ

静かに飲みたい常連さんが離れるリスクは正直あるよ。
だから時間帯や席で棲み分けるようにしてるんだ。
ファミリー層を取り込む5つのポイント
① キッズメニューは「専用品」を作らなくていい
鳥貴族の事例では、通常メニューの味付け・大きさをそのままに、盛り合わせただけの構成でした。
専用の食材や調理工程を増やさないので、現場の負担がほぼゼロです。既存メニューの組み合わせかで構成します。
② ソフトドリンクを充実させる
子どもだけでなく、運転する親・飲めない大人にも効きます。
ここが弱いと「行きにくい店」になります。
③ 設備は「あるか」より「伝わるか」
子ども用イス、おむつ交換台、ソファー席などが大切ですが、まず既にあるものを発信することが先です。
「子ども用イスあります」の一言をSNSやGoogleマップに書くだけで、来店のハードルは大きく下がります。
④ 時間帯・席で棲み分ける
前述の通り、早い時間はファミリー、遅い時間は大人。
これを明示すれば、双方の客層を失いません。
⑤ アレルギー対応の情報を用意する
小さな子どもを連れる親が最も気にする点です。
「対応できます」ではなく「この料理に何が入っているか答えられる」体制があるだけで信頼されます。
今すぐやること チェックリスト
1. 既存メニューの組み合わせでキッズメニューを1品作る
2. ソフトドリンクのラインナップを見直す
3. 子ども向け設備の有無をSNS・Googleマップに書く
4. 時間帯・席でファミリー/大人を棲み分ける
5. アレルギー対応情報を整理しておく
価格設定とオペレーションを崩さない工夫
原価率は「単品」ではなく「組み合わせ」で考える
キッズメニューを新設する際、多くの店が悩むのが原価率です。
しかし鳥貴族のように、通常メニューをそのまま盛り合わせる方式なら、原価管理の手間は増えません。
唐揚げ・ポテト・ウインナーなど、すでに仕入れているパーツの組み合わせで十分成立します。
新しい食材を仕入れる必要がなければ、廃棄ロスのリスクも増やさずに済みます。
仕込みの動線を増やさない
キッチンの負担で最も避けたいのは「専用の仕込み工程」が増えること。
既存の仕込みラインで完結する構成にすれば、繁忙時間帯にキッズメニューだけが遅れて出てくる、という事態を防げます。
私の店でも、通常メニューの取り分けだけで完結する構成に絞ったことで、オペレーションはほぼ変わりません。
「子連れ歓迎」をどう伝えるか
設備やメニューを整えても、伝わっていなければ来店にはつながりません。
親御さんが実際に店を選ぶ際にチェックしている場所は、次の3つに集中しています。
- Googleビジネスプロフィール:写真・属性(子ども連れ歓迎)・口コミ返信
- 予約サイトの店舗紹介文:キッズメニュー・設備の有無を明記
- SNS:実際の来店写真やお子様プレートの投稿
特にGoogleビジネスプロフィールは、来店前の検索で必ず目にする場所です。
「子供用の椅子はありますか」といった口コミへの返信一つで、信頼度が大きく変わります。設備を整えることと同じくらい、それを見える形で発信することに力を入れるべきです。
よくある疑問Q&A

小さいお店だと席数的に厳しい場合もあるよね?
何から手をつければいいの?

席を増やすんじゃなくて、まずは「時間帯」から始めるのがいいよ。
早い時間だけ開放すれば、席数はそのままでも始められるんだ。
Q. 常連さんへの説明はどうすればいい?
「〇時以降は通常営業に戻ります」と、時間帯の区切りを事前に案内しておくと、常連さんも安心して来店できます。急に客層が変わったように感じさせないことが大切です。
Q. スタッフの理解はどう得る?
「なぜファミリー層を取り込むのか」を、客数や売上のデータとあわせて共有すると、スタッフも納得して動きやすくなります。理由がわからないまま業務だけ増えると、現場の不満につながります。
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始めたら何を見ればいいか?
始めた施策が実際に効いているかどうかは、感覚だけで判断せず、数字で振り返ることが大切。
特別なシステムを入れなくても、次の3点はレジや予約台帳から把握できます。
- 早い時間帯(18〜19時台)の客数・売上の推移
- 子ども連れグループの客単価(通常客との比較)
- 同じファミリーの再来店率(月2回目以降の来店があるか)
特に3つ目の再来店率は重要です。
単発の来店で終わっているなら、まだ「選ばれる店」にはなれていないというサインです。
逆に同じ家族が月に何度も来るようになれば、それは長期的な常連客への投資が実り始めている証拠。
私の店では、3ヶ月ほど様子を見て、早い時間帯の客数がどう変化したかで施策の見直しをするようにしています。
まとめ:ファミリー対応は「守り」ではなく「攻め」
居酒屋が子連れ歓迎に舵を切る背景を整理します。
- 客数が伸びず、売上は値上げ頼み——新しい客層の開拓が急務
- 若者のアルコール離れ(20代男性の飲酒習慣14.5%)でビジネスモデルが揺らいでいる
- ファミリー層は1組あたりの単価が高い
- 地方では、ファミリーを外すと商圏が成立しない
- 子どもの頃の記憶は、将来の常連客を育てる
一方で、静かに飲みたい客層が離れるリスクは現実にあります。
だからこそ「時間帯・席で棲み分ける」ことが鍵です。
鳥貴族が390円のキッズプレート1品から始めたように、特別な投資がなくてもできることから始められます。
既存メニューの組み合わせ、ソフトドリンクの充実、そして「子ども連れOK」と発信すること。
「子連れ歓迎」は、単なる客層拡大ではありません。10年後の常連客を、今つくる投資なのだと思います。
今日の1組の家族連れが、10年後にどんな客として戻ってくるか?
そこまで見据えて、まずは小さく始めてみることが大切です。
参考
- Impress Watch「鳥貴族、『お子様プレート』をグランドメニューに 創業以来初」
- 外食業界紙「キッズプレート初導入 客数減でファミリー狙いへ」
- 外食業界紙「チキンハンバーグ投入 キッズプレートに次いでファミレス客狙い」
- PR TIMES「創業以来初のお子様プレートが仲間入り」
- 富士経済「外食産業の国内市場は2025年に35兆7,116億円の見込」
- ニッセイ基礎研究所「さらに進行するアルコール離れ」
- 日本フードサービス協会「市場動向調査」
- 外食支援メディア「外食市場は回復しているのか?」
- クックビズ総研「今、飲食店の子供連れファミリー戦略がアツい」
- ぐるなび通信「ファミリー層の集客で成功した飲食店がやっている3つのノウハウ」
- フーズチャネル「ファミリー層を集客する飲食店運営法」

