
「損益分岐点って、よく聞くけどイマイチわかってない」
毎月なんとなく回っていればOKでしょ、なんて思ってはいませんか?。
ある月に売上が落ちたとき、「今月、いくら売れば赤字にならないんだっけ?」という数字が、パッと出てこない。
答えがわからないままお店に立つって、ぼんやりした霧の中で料理しているみたいで、なんとも落ち着かないんです。
飲食店でよく聞く損益分岐点は、別に難しい話じゃないんです。
「自分の店が赤字にならないための最低ライン」を知るための、ただの数字。
でも同時に、数字ばかり見ていると失うものがあるという話も、この記事でしっかり書いていきます。

損益分岐点って聞いたことはあるけど、個人店で実際に計算したことないな……。

私も最初はそうだったよ、でも一度だけ自分の数字を出してみると、霧が晴れる感覚があるんだ。計算式は1つだけだから、今日はそこから話していくよ。
・飲食店の損益分岐点とは何か、計算式と固定費・変動費の分け方。
・「今日何人来れば黒字か」を1日の客数に落とし込む方法。
・FL比率60%以内の意味と、個人店がチェックすべき目安。
・損益分岐点を「守るため」ではなく「遊ぶ余白を知るため」に使う経営の視点。
飲食店の損益分岐点とは?固定費・変動費の分け方からわかりやすく解説

難しく考えなくていいです。
飲食店の損益分岐点とは、売上がこのラインを超えれば黒字・下回れば赤字、という境界線の売上金額のこと。
計算するには、まず「費用の種類」を固定費と変動費の2つに分けるところから始めます。
飲食店の固定費とは 毎月必ず発生するコストの種類と具体例
売れても売れなくても、毎月必ず出ていく費用が固定費。
| 固定費の種類 | 具体例・補足 |
|---|---|
| 家賃 | 売上ゼロでも毎月必ず発生する |
| 人件費(正社員・オーナー自身の給与含む) | 飲食店で最大の固定費になりやすい |
| リース料・ローン返済 | 厨房機器・POSレジなど |
| 保険料・通信費・水道光熱費の基本料金 | 毎月ほぼ一定額が発生 |
飲食店の変動費とは?売上に連動して増減するコストの見分け方
売上が増えれば増え、減れば減る費用が変動費。
食材費・飲料費がその代表で、来客数に正直に連動します。
| 変動費の種類 | 具体例・補足 |
|---|---|
| 食材費・飲料費 | 売れるほど増える。原価率管理の中心 |
| パート・アルバイト人件費 | シフト調整で変動する |
| 消耗品(割り箸・ラップ・袋類など) | 来客数に比例して増減 |
損益分岐点の計算式と個人店の実例 月150万売上の店で試してみる
覚える計算式はこの1つだけでいいです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
個人店の実例で計算してみましょう。
【個人飲食店の計算例】
月の売上:150万円
食材費(変動費):45万円(原価率30%)
家賃・人件費など(固定費合計):80万円
変動費率:45 ÷ 150 = 0.30
損益分岐点 = 80万 ÷(1 − 0.30)= 80万 ÷ 0.70 = 約114万円
月114万円の売上で収支ゼロ。150万売れていれば約36万円の利益が出ている計算になる。

「114万円」って数字がはっきり出るだけで、なんか安心感がちがうね。ぼんやり「大丈夫かな」って思ってるのとは全然ちがう。

そう。「なんとなく今月やばいかも」じゃなくて「あと何万円」って数字で動けるようになる。これが大事なんだよ。
損益分岐点を「1日の必要客数」に変換する計算方法

売上金額よりも、「今日何人来れば黒字か」のほうが、現場での実感につながります。
仕込みをしながら「今日は何人入るかな」と考えるとき、頭にあるのは「月150万」じゃなくて「今日何人来るか?」です。
1日何人来れば黒字か 客単価と原価率で計算する方法
損益分岐点客数(1日)= 1日あたり固定費 ÷(客単価 − 1人あたり食材費)
先ほどの個人店の例に当てはめてみます。
客単価:3,500円 1人あたり食材費(原価率30%):1,050円
1人あたり粗利益:3,500 − 1,050 = 2,450円
月固定費80万円 ÷ 25日営業 = 1日あたり固定費 3.2万円(32,000円)
損益分岐点客数 = 32,000 ÷ 2,450 ≒ 1日13人
今日13人来れば、今日分の経費は回収できている。
客数の目標を持つと飲食店の経営判断が速くなる理由
「今日15人来た、よかった」という手応えが、ちゃんと数字と結びつきます。
逆に「今日9人しか来なかった」と気づいたとき、明日どう挽回するかを冷静に考えられる。
感覚だけで動いていたときと、明確に違います。
目標客数を持つことで、営業中の判断スピードが劇的にかわります。
飲食店のFL比率とは 個人店が黒字を維持するための目安と計算方法

損益分岐点と合わせて必ず知っておきたいのが、FL比率です。
FL比率 =(F:食材費 + L:人件費)÷ 売上高 × 100
飲食店経営の目安は60%以内。個人店でオーナーが1人で回しているなら55%以下を目指したい。
FL比率60%以内が目安 状況別の判断基準をわかりやすく解説
| FL比率 | 状況の目安 |
|---|---|
| 50%以下 | 優秀。利益が出やすい経営構造 |
| 55〜60% | 飲食店の健全なライン |
| 61〜65% | 注意。固定費を賄えない月が出やすい |
| 66〜70% | 要改善。赤字体質に入りかけている |
| 70%超 | 緊急対処が必要。赤字の慢性化リスク大 |
FL比率が悪化しやすい3つのタイミングと対処のポイント
食材の高騰期、スタッフの入れ替え直後、開業初年度。
こういう時期はFL比率が跳ね上がりやすい。
「今うちのFL比率は何%か」を月に1回確認するだけでも、経営の感度がまるで変わります。

FL比率って、損益分岐点とセットで見ると全体像がつかみやすいんだね。

損益分岐点が「いくら売ればいいか」で、FL比率が「費用の構造は健全か」を見る。2つ合わせて初めて、今の状態が見えるよ。
損益分岐点を知ったうえで「個人店だからできる経営」をする

ここまでの話は、どの経営記事にも書いてある。
でも18年やってきて強く感じるのは、数字を守ることに必死になりすぎると、かえってお店が面白くなくなるということだ。
大手チェーンは数字で管理するしかない。
何十店舗もある中でスタッフ個人の裁量に任せたら、品質がバラバラになるから、「原価率はこれ以下」「オペレーションはマニュアル通り」という縛りが必要になる。
でも個人店は違います。
オーナーがいて、スタッフがいて、目の前のお客さんとの関係がある。
その「関係」こそが、チェーン店には絶対に真似できない、個人店最大の武器なんです。
仕入れコストをサービスに回した実話 個人店の経営に「遊び」が生まれた日
ある日、いつも頼んでいる魚屋から「今日ちょっといいのが入ったから、サービスしとくよ」と、いつもの仕入れ値の半額近くで、脂の乗ったブリが手に入りました。
そのとき、2つの判断ができます。
A:原価率を下げるチャンスとして使い、今日の利益を厚くする。
B:今日来てくれたお客さんに、いつもより少し大きめに切って出す。
私はBを選びました。
その夜、常連のサラリーマングループが来ていました。
刺身を出したとき「今日のブリ、すごくないですか?」と喜んでくれました。
「今日いい仕入れがあったんですよ、ちょっと奮発しました」と話すと、翌週また来てくれた。
しかも友人を連れてきてくれて。
仕入れコストが安くなった分の「利益」を、お客さんに返す。
その結果、翌月の売上が少し上がる。
これは数字の計算には出てこない、現場の判断のみができる戦法です。

Aを選べば今日の利益は増えるけど、Bのほうが長い目で見て正解だったんだね。

一瞬の損得だけじゃないんだよ。お客さんに「記憶」が生まれたとき、個人店は強い。チェーン店にはそれができないからね。
廃棄コストをゼロ円の集客に変えた方法 個人店にしかできない原価の使い方
開栓した日本酒が、微妙な量だけ残ってしまうことがある。
酸化が進む前に使いきりたい、でもメニューにない量で出すのは難しいという状況。
そのとき、カウンターに座っていたお客さんに声をかけて。
「よかったら少し飲んでみますか?次回頼むときの参考に」
なんて一言添えて出すと、お客さんは喜んで飲んでくれた。
その日本酒を気に入って、「この前の、1合もらえますか?」と再来店にも繋がりました。
原価的に言えば、「損」だったかもしれない。
でも、そのお客さんはその日本酒をSNSに上げてくれて「こういうサービスしてくれる店、好き」という一言つきで上げてくれてました。
廃棄になるはずのコストが、ゼロ円の集客広告に。
これが個人店の経営にしかできない「遊び」だと、私は思っています。
飲食店が損益分岐点を経営に活かす3つの具体的な使い方

数字を知らないのはまずい、でも数字に縛られるのも、もったいない。
おすすめの使い方はひとつ。
損益分岐点を「守るためではなく、遊ぶ余白を知るために使う」ことです。
具体的には以下の3ステップで十分です。
月1回、損益分岐点を確認するだけで経営の感度が変わる
月初めに今月の固定費を合計して、「何人来れば大丈夫か」を1回計算する。
それだけでいいです。
毎日追いかける必要はなく、月に1回確認するだけで、今月の経営の感度がまるで変わります。
損益分岐点を超えたら「余白」としてお客さんに還元する
月半ばに「今月はもう損益分岐点を超えた」とわかった週は、仕入れやサービスで少し遊べる。
お客さんへの還元を、計算しながら楽しめる。
これが個人飲食店ならではの面白さで、かつ販売促進になります。
固定費が変わったら損益分岐点を計算し直す
固定食材費が上がった、家賃交渉が決まった、スタッフが変わった。
そういう固定費の変化があったタイミングで計算し直します。
毎月毎日追いかけなくていいです。
それが現場を回しながら続けられる現実的なやり方です。

毎日計算しなくていいって聞いて、ちょっとほっとした。月1回ならできそう。

続けられることが大事。完璧な管理より「月1回でも知っている」状態のほうが、よっぽど現場で役に立つんだよ。
まとめ 飲食店の損益分岐点は「計算して、超えたら遊ぶ」が正解
飲食店の損益分岐点は、知っていて損はないです。
むしろ知らないと、霧の中で経営することになり大変なことになります。
でも、数字を知ったうえで「今日はあのお客さんのためにサービスしよう」という判断ができるのが、個人店の醍醐味です。
大手は数字で管理する。
個人店は数字を土台にして、その上で人との関係を育てる。
仕入れが安かった日、余った日本酒がある日、そういう「偶然」を黒字経営の武器に変えられるのは、オーナーが厨房に立つ個人店だけです。
| 項目 | 内容・目安 |
|---|---|
| 損益分岐点売上高の計算式 | 固定費 ÷(1 − 変動費率) |
| 損益分岐点客数(1日)の計算式 | 1日固定費 ÷(客単価 − 1人あたり食材費) |
| FL比率の目安 | 60%以内(個人・1人回しは55%以下) |
| 計算する頻度 | 月1回 + 固定費が変わったタイミング(年2回目安) |
| 損益分岐点の正しい使い方 | 守るためではなく「遊ぶ余白」を知るために使う |

数字って、縛られるものじゃなくて、使うものなんだね。今月さっそく自分の店の数字、出してみる。

「自分の店の損益分岐点」を1回でも計算したことがある店主と、ない店主では、経営の質がまるでちがうんだよ。今日も同じ飲食の世界でがんばっていきましょう!




