
「あの角の居酒屋、また閉まってる。」
気づいたら、近所の馴染みの居酒屋がなくなっていた。
そんな経験、最近増えていませんか?
実はこれ、気のせいでも偶然でもなく2025年、飲食店全体の倒産件数は900件。過去最多を更新しました。
出典:帝国データバンク「飲食店の倒産動向(2025年)」
そのなかで居酒屋(酒場・ビヤホール)は204件と、3年連続で200件超えの高水準が続いています。
コロナが明けて「さあ、これから」と思っていた矢先に、むしろ閉店が加速している。
その背景には、単なる景気の問題では片付けられない構造的な変化が起きています。
「うちは常連もいるし大丈夫」と思っているあなたにこそ、読んでほしい内容です。

コロナ明けで回復してると思ってたのに、なんで閉店が増えてるの?

売上が戻っても、コストが上がりすぎて利益が残らない。時代の変化に対応できていない店が、じわじわと退場させられているんだよ。
私は19歳から飲食業に入り、現在は15坪・25席の居酒屋を独立開業して18年目になります。
SNSで流れてくるような予約の取れない大繁盛店ではないですが、いま現在も安定した経営ができています。
同業者の閉店を何度も目の当たりにしてきた経験から、消えていく店に共通するパターンと、生き残るための考え方を正直にお伝えします。
- 昔ながらの居酒屋が消えていく4つの本当の理由。
- 「若者の酒離れ」だけじゃない、見落とされがちな構造的な問題。
- 今日から動ける生き残りのための具体的な対策。
若者の「酒離れ」じゃなく「居酒屋離れ」が起きている

問題の本質は「飲まない」ではなく「選ばない」
「最近の若い子はお酒を飲まないから仕方ない」
そう言って、時代のせいにしていませんか?
確かに若者のアルコール消費量は減っています。
20代の約4人に1人は、健康や経済的な理由から意識的にお酒を控える「ソーバーキュリアス」と呼ばれる層です。
(「Sober=しらふ」「Curious=好奇心」を 組み合わせた言葉で、アルコール依存症などの 理由ではなく、自分の意志で飲まないことを 選ぶスタイル)
しかし、問題の本質はそこではありません。

若者がお酒を飲まなくなったのではなく、「居酒屋でお酒を飲む理由」がなくなったってこと?

まさにそこなんだよ。若者はキャンプ場でも、推し活のお祝いでも、家飲みでも楽しそうにお酒を飲んでいる。飲まないんじゃなくて、「居酒屋」を選ぶ必要がなくなっているんだよ。
かつて居酒屋が担っていた役割は職場の人間関係を潤滑にする場、初対面の人と打ち解ける場は、今やオンライン飲み会や別の場所に置き換えられています。
飲み会文化そのものが変わった
特に深刻なのが「飲み会文化そのものの変化」です。
テレワークの普及で「会社帰りに一杯」という文化が激減し、職場の飲み会は任意参加・少人数が当たり前になりました。
| 項目 | 10〜15年前 | 現在 |
|---|---|---|
| 職場の飲み会 | 半強制参加が多い | 任意・参加率低下 |
| 会社帰りの一杯 | 文化として定着 | テレワーク増で激減 |
| 若者の集まり方 | 居酒屋が定番 | カフェ・バル・個室系に分散 |
| お酒の位置づけ | コミュニケーションツール | 「必須」ではなくなった |

来てくれる人が「変わった」のではなく、お客さんが「居酒屋を選ぶ理由」が変わったってことだね。

これを理解しないまま「昔通り」を続けると、じわじわと来客が減りる。来店する理由を再設計しないかぎり、客数は戻らないんだよ。
職場の飲み会が開催された割合は、2017年の約75%から2025年には約60%に減少。この8年間で15ポイントも低下しており、飲み会文化の変化が数字に表れている。ホットペッパーグルメ外食総研「職場の飲み会に対する期待と参加実態を調査(2025年4月実施)」
https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/column/20250529
- 若者がお酒を「飲まない」のではなく、「居酒屋」を選ばなくなっている。
- テレワーク普及・飲み会文化の変化で「帰りに一杯」が激減した。
- 来店する理由を再設計しないかぎり、客数は戻らない。
食材費・人件費・光熱費の「コスト三重苦」が利益を消している

売上が戻っても、お金が残らない理由
売上が戻ってきたように感じているのに、なぜかお金が残らない。
そんな経営者が急増しています。
理由はシンプルで、コストが売上の回復を上回るペースで上がっているからです。

原価率は、ここ数年でかなり上がった感覚あるんだけど、気のせい?

気のせいじゃないよ。食材は輸入コスト・円安の影響でここ数年で大幅に上昇しているんだ
飲食店経営者の98%が物価高騰の影響を実感していると回答。特に影響が大きい品目は「電気(79.8%)」「食用油(73.3%)」「ガス(60.8%)」と、業態を問わず必須のインフラ・資材のコスト上昇が深刻だとわかった。株式会社シンクロ・フード「飲食店が選ぶ2024年のニュース調査」(2024年12月実施、回答者数297名)
https://www.synchro-food.co.jp/news/press/6345
主力お酒を筆頭に、たまご、肉類・揚げ油・小麦粉、冷凍食品。昔ながらの居酒屋メニューの主力食材が、軒並みコストアップしています。
世の中の賃上げ政策から人件費も右肩上がり、加えて水道光熱費も高止まり傾向で苦難は絶えません。
| コスト項目 | 主な原因 | 現場への影響 |
|---|---|---|
| 食材費 | 円安・輸入コスト・物価高 | 原価率を圧迫 |
| 人件費 | 最低賃金の引き上げ・人手不足 | 都心では最低時給1200円超え |
| 光熱費 | エネルギー価格の高騰 | 月の固定費が大幅に増加 |
値上げを恐れるほど、利益が消えていく
コストが上がっているのに、値上げに踏み切れない経営者が多いのが現状。
「常連が離れるのが怖い」
「競合が値上げしてないのに自分だけ上げにくい」
このまま我慢し続けて、利益がみるみる消えていく。
これが今、多くの昔ながらの居酒屋を苦しめている現実です。

値上げって、どうやって伝えたらいいの?

「値上げします」じゃなく「より良い食材を使うことにした」という文脈で伝えるのが大事。
値段が上がった分、食材のこだわりをちゃんと見せれば、常連さんはむしろ応援してくれます。
私の店でも数回、価格の見直しをしました。
丁寧に理由を伝えたところ、常連さんから
「そりゃ仕方ないね、むしろ遅いくらいだよ」と言ってもらえました。
信頼関係があれば、値上げは客離れの原因にはなりません。
- 食材費・人件費・光熱費が同時に上昇する「コスト三重苦」が利益を圧迫している。
- 売上が戻っていても、コスト増で手元に残らないケースが急増している。
- 値上げを恐れず「価値の伝え方」を工夫することが生き残りの鍵になる。
「変わらない」ことが最大のリスクになっている

「昔ながらの味」と「昔ながらの経営スタイル」は別物
「30年間、この味でやってきた。これが俺の店だ。」
その誇りは本物だし、尊いものです。
でも今、変わらないことそのものがリスクになっている時代があります。

でも「昔ながら」こそが差別化じゃないの?

ただ「昔ながらの味」は武器になるけど、「昔ながらの経営スタイル」はリスクなんだよ。この2つはしっかり分けて考えないといけない。
飲食店を選ぶ際に「キャッシュレス決済ができるかどうかをチェックする」と答えた消費者は約65%。またキャッシュレス決済が使えない店に対して「古い・時代遅れ」というイメージを持つ人が22%にのぼった。さらにぐるなびの調査では、外食時のネット予約経験が6割超となり、電話予約を20ポイント以上上回った。アルファノート株式会社「飲食店利用者のキャッシュレス実態調査」(2024年6月)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000041697.html
ぐるなび「予約してから行く外食」調査
https://pro.gnavi.co.jp/magazine/t_res/cat_3/a_3987/
変えてはいけないものと、変えなければいけないもの
具体的に言うと、こういう「変わらなさ」が命取りになります。
| 変わっていないこと | リスク |
|---|---|
| メニューが10年以上同じ | 話題性ゼロ、SNSで拡散されない |
| SNS・ネット集客をしていない | 新規客が来ない、存在を知られない |
| 予約はすべて電話のみ | 若い世代が予約しにくく機会損失 |
| 内装・雰囲気が古いまま | 女性客・若年層の来店ハードルが上がる |
| 現金のみの対応 | キャッシュレス需要を取りこぼす |

つまり、味・接客・こだわりは変えない。でも、お客さんへの「届け方」は時代に合わせるってこと?

この2つを切り分けられた店が、長く生き残っている。私の店もInstagramを始めてから、それまで来たことのなかった層が来てくれるようになったよ。
- 「昔ながらの味」は強みだが、「昔ながらの経営スタイル」はリスク。
- SNS・ネット予約・キャッシュレスなど、お客さんへの「届け方」は更新が必要。
- 変えるべきことと守るべきことを、自分で整理して言語化する。
リピーターを育てず、新規客頼みの経営を続けている

売上が不安定な店の共通点
「先月は忙しかったけど、今月はなぜかガラガラ」
売上がジェットコースターのように不安定な店の多くは、新規客ばかりに頼っていて、リピーターが育っていないという共通点があります。

新規のお客さんが来てくれること自体は悪くないんじゃないの?

もちろん悪くない。でも新規客だけで売上を維持しようとすると、広告費がかかり続けるし、少し話題性が落ちると一気に閑散とするんだ。
リピーターがいる店はその揺れが小さくて、経営が安定し先行投資もしやすくなります。
個人居酒屋の最大の武器は「顔が見える関係性」
昔ながらの居酒屋が強かったのは、実は常連客との濃い関係性があったからです。
飲食業界の価格転嫁率は32.3%と、全業種平均(39.4%)を下回っている。多くの飲食店がコスト上昇を実感しながらも十分に価格転嫁できておらず、常連客との関係性を育てることで値上げへの理解を得られる体制づくりが急務だとわかる。帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2025年7月)」
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260113-insyokuten2025/
「大将が自分の顔を覚えていてくれる」
「いつもの席に通してくれる」
「好きなお酒を把握してくれている」
これは、チェーン店には絶対に真似できない武器です。
ところが、その武器を使いこなせていない店が増えています。
| リピーター育成の行動 | できている店 | できていない店 |
|---|---|---|
| 顔・名前・好みを覚える | 意識的に実践 | 覚えていない |
| SNSで日常・料理を発信 | 定期的に投稿 | アカウント未開設 |
| 再来店を促す一言 | 「次は〇〇入れときますね」 | 会計だけで終わる |
| ポイントカード・特典 | 仕組みとして運用 | 特になし |

「また来たい」と思わせる仕掛けって、お金をかけなくてもできるんだね。

今日来てくれたお客さんの名前を覚えて、次に来たときに呼んであげる。それだけでも全然違う。接客の効果は絶大なのに、原価ゼロなんだよ!
- 新規客だけでは売上が不安定になる。常連・リピーターが経営の安定を作る。
- 個人居酒屋の最大の武器は「顔が見える関係性」。これをフル活用する。
- SNS・声がけ・再来店の仕掛けを日常の習慣にすること。
昔ながらの「味」は武器になる!変えるべきは「やり方」

気づいた今が、一番早いタイミング
居酒屋の閉店ラッシュは、単純に「景気が悪い」「若者が飲まない」だけが原因ではありません。
時代の変化に気づかず、経営スタイルを更新できなかった店が、少しずつ市場から退場させられているのが現実です。

じゃあ、今からでも遅くないの?

むしろ「気づいた今」が一番早いタイミングだよ。大事なのは、完璧な準備じゃなく「正しい方向で動き続けること」だから。
| 課題 | 今日からできる一歩 |
|---|---|
| 居酒屋離れへの対応 | 「なぜうちに来るのか」を常連に直接聞いてみる |
| コスト三重苦への対応 | 原価率・FL比率を今月中に計算して把握する |
| 変化への対応 | InstagramかXのアカウントを今日作る |
| リピーター育成 | 今日来てくれた常連の名前を1人覚えて呼ぶ |
昔ながらの居酒屋には、チェーン店には絶対に出せない「温かさ」と「人間味」があります。
その強みを活かしながら、時代に合った「届け方」を加える。
それだけで、あなたの店はまだまだ戦えます。

昨日より今日、今日より明日だよね。

未来は『ある日突然』じゃなく、『いま自分の意志』で変わるんだよ。
これから一歩踏み出そうとするあなたに、心からエールを送ります。
今日も同じ飲食の世界で、一緒にがんばりましょう!
このブログでは引き続き、飲食店経営に役立つ情報を発信していきます。

