日高屋社長「日本人をとるしかない」炎上の本質 特定技能停止が飲食業界に突きつけた人材危機

2026年4月、一つの社長発言がSNSを揺さぶりました。

中華チェーン「日高屋」を運営するハイデイ日高の青野敬成社長が、テレビ東京の経済番組WBS(ワールドビジネスサテライト)に出演。

外国人の在留資格制度「特定技能」の外食業での新規受け入れ停止を受けて、こう述べました。

「外国人の特定技能は駄目となると、日本人の高校卒業生や大学卒業生、専門卒を中心にとるしかない」

この発言が大炎上しました。

はな
はな

日高屋の社長発言ってそんなに問題なの?現場の本音って感じがしたけど。

たかし
たかし

でも問題は発言の意図じゃなく「語る順番」だったんだよ。

「日本人は代替品なのか」「仕方なく雇う扱いか」という怒りの声が相次ぎ、会社は2日後に謝罪文を公表。

しかしその謝罪がさらに火に油を注ぐ結果になりました。

私は19歳から飲食業に入り、居酒屋を独立開業して18年目の現役店主です。

この一連の出来事は「言葉の問題」に見えますが、その背景には飲食業界が抱える構造的な人材危機と、炎上時代における説明責任の難しさが凝縮されています。

この記事を読んでわかること

・特定技能の外食業「新規受け入れ停止」が起きた理由。
・発言から炎上・謝罪・謝罪炎上までの経緯。
・飲食業界全体が直面する人材構造の問題。
・経営者が学ぶべき「語る順番」と「謝罪の中身」の重要性。

今回の炎上は日高屋だけの問題ではありません。飲食業界全体が2026年以降、採用構造の大転換を迫られています。


なぜ特定技能の外食業が「新規受け入れ停止」になったのか

まず、炎上の背景にある制度の問題を整理します。

特定技能制度とは何か 2019年に創設された人手不足対策

特定技能は2019年、深刻な人手不足を解消するために創設された在留資格制度です。

業種ごとに「1号」「2号」に分かれており、外食業は「特定技能1号」に該当します。

在留期間は原則5年、受け入れ上限は5万人と設定されていました。

1号は日本語能力と技能試験の合格が条件で、即戦力として飲食業界で重宝されてきました。

2026年4月13日 上限到達で新規受け入れが原則停止に

出入国在留管理庁の発表によると、2026年2月末時点で外食業の特定技能1号在留者はすでに約4万6,000人に達しており、同年5月頃に上限の5万人を超える見込みとなりました。

これを受け、2026年4月13日以降、外食業への新規在留資格認定証明書の交付申請が不交付となりました。

項目内容
創設年2019年
外食業の区分特定技能1号(在留期間:原則5年)
受け入れ上限5万人
2026年2月末時点の在留者数約4万6,000人
停止日2026年4月13日以降 新規受け入れ原則停止
はな
はな

想定より早く上限に達したってこと?

たかし
たかし

コロナ後のインバウンド急回復と国内の人手不足が重なって、想定をはるかに上回るスピードで受け入れが進んだんだよ。

飲食店の約6割が人手不足を感じており、特定技能制度は即戦力として活用されてきました。

停止により、飲食業全体の採用計画が根底から見直しを迫られています。

発言から炎上・謝罪・謝罪炎上までの経緯

WBS放映と社長発言(4月13日) 現場の本音が切り取られた

テレビ東京WBSは、特定技能停止の影響を受けた企業として日高屋を取材しました。

青野社長は「今まで4割ぐらいは外国人でやろうと考えていたところが、今年はもう手の打ちようがない」と困惑を示しました。

その対策として述べたのが冒頭の発言です。

発言の意図は「外国人採用という選択肢が閉じられたため、採用方針を変えざるを得ない」という状況説明だったと考えられます。

ハイデイ日高では新入社員の約3割が特定技能1号の外国人材であり、4割を外国人で賄う計画が崩れたことへの現場感覚がそのまま言葉になったのでしょう。

「とるしかない」の一言が炎上を生んだ

「とるしかない」という表現が、「外国人が雇えなくなったから仕方なく日本人を採用する」と解釈されました。

・「日本人は二番手なのか」。
・「日本人を最初から雇えばよかったのでは」。
・「外国人優先で日本人差別では」。
・「もう日高屋には行かない」。

という声が相次ぎ、炎上は急速に拡大しました。

文脈が消えて「結論だけ」が切り取られることで、発言の意味がまるで変わってしまい、これが炎上の構造です。

謝罪文の発表(4月15日)とさらなる炎上

放映から2日後、ハイデイ日高は公式サイトとXに謝罪文を発表しました。

項目内容
謝罪の理由日本人労働者を軽視しているかのように受け取られかねない表現だった
発言の意図人材確保においてより広い視野で考える必要性をお伝えするためだった
助成金について外国人雇用による助成金を受け取った事実はない
待遇について外国人労働者の給与・福利厚生・昇給・昇格は日本人と同じ条件

出典:産経新聞「日高屋が社長発言を謝罪」(2026年4月15日)

しかし謝罪文はむしろ批判を増幅させました。

「同待遇なら、なぜ外国人を優先したのか」「トップの発言に対する説明責任が不十分」という声が続出しました。

謝罪が「表現への印象管理」に終始し、企業としての採用理念・価値観に触れていなかったことが問題視されました。

はな
はな

事実を説明したのに、なんでそれがまた燃えるの?

たかし
たかし

SNSで人が怒るときに求めているのは「言い方を直します」じゃなくて、「なぜそういう考え方をしているのか」という価値観の説明なんだよ。


飲食業界全体が直面する人材構造の問題

今回の炎上は日高屋だけの問題ではありません。

飲食業界全体が同じ構造的課題を抱えています。

飲食業の人手不足は深刻な水準が続いている

日本の飲食業界では少子化・労働力人口の減少に加え、労働環境への敬遠感から日本人の応募者が慢性的に不足しています。

飲食業の人手不足の実態
項目内容
外国人労働者数(2024年10月末)約230万人超・過去最多を更新
外食業の特定技能在留者(2026年2月末)約4万6,000人(上限5万人に迫る)
飲食店の人手不足感約6割が「不足している」と回答
日高屋の外国人比率新入社員の約3割が特定技能1号

出典:coki「日高屋社長発言で謝罪 特定技能停止で露呈した外国人依存の危機」(2026年4月)

大手飲食チェーンでは、コロナ前は日本人のみで採用目標を達成できていました。

現在は大手でも新卒の3〜4割が外国人採用という状況になっています。

特定技能停止で飲食業全体の採用計画が崩れた

特定技能停止を受けたアンケートでは、約3割の飲食店が「今後の日本人採用が難しくなる」と回答しています。

同時に約3割が「今後も外国人採用に前向き」と回答しており、外食業界全体が岐路に立たされています。

出典:PR TIMES「外食業の特定技能停止に関する飲食店調査」

日高屋社長の「とるしかない」という言葉は、多くの飲食店経営者が心の中で思っていることの、正直な表れだったと私は思います。

私自身も18年の経営の中で、アルバイトの確保に苦労し続けてきました。

「誰でもいいから来てほしい」という現場の本音と、「表現の適切さ」を求めるSNSの目線のギャップが、今回の炎上を生んだとも言えます。

日本人採用が「難化」する現実 飲食業が直面する構造問題

特定技能が使えなくなった今、飲食業界は日本人採用の競争に本格参入せざるを得ません。

しかしここで大きな壁があります。

飲食業が日本人採用で抱える構造的な問題
・長時間労働・土日出勤のイメージが根強く応募者が集まりにくい。
・他業種と比べた賃金水準の低さ。
・有効求人倍率が全産業平均を上回る慢性的な売り手市。場。
・特定技能停止による即戦力人材の突然の消滅。

これらの問題を抱えたまま「日本人を採用する」と言っても、現場が動くほど簡単ではありません。

採用環境の改善なしに「日本人を採用する」という結論だけを語っても、人は集まらないのが現実です。


本当の問題は「謝罪の中身」にあった 経営者が学ぶ説明責任

炎上が鎮火しない最大の理由は、謝罪文が「表現への印象管理」に終始したことにあります。

本来求められていたのは企業理念・採用哲学の開示でした。

「事実の提示」と「価値観の説明」は別物

謝罪文には「助成金を受け取っていない」「同一待遇だ」という事実の提示がありました。

しかし「なぜそうしているのか」という理由と価値観が語られていませんでした。

今回求められていたのはこういう言葉だったはずです。

サステナビリティページ「人権・従業員の尊重」には

「性別・国籍等に関係なく、各人の自主性や価値観が尊重される会社となるよう取り組んでおります」

と記載されています。
参照:ハイデイ日高「人権・従業員の尊重」公式ページ

ハイデイ日高はこの理念を公式サイトに記載していました。

それを謝罪文で前面に出せていれば、炎上はここまで続かなかったかもしれません。

飲食店経営者が今回から学べること

18年間、お客様や地域と向き合ってきた経営者として、この件で感じたことがあります。

飲食店の経営者は「現場の言葉」で話す人がほとんどです。

「とるしかない」という言葉も、現場では普通に使う表現です。

しかしその言葉がカメラの前に出たとき、文脈が消えて「結論だけ」が切り取られます。

たかし
たかし

発言の意図がどれだけ正当でも、語る順番を誤ると意味が歪む。

個人店であっても、SNSやメディアで発信する機会が増えている今、この「語る順番」の問題は他人事ではありません。

お客様へのお詫び投稿、スタッフへの方針説明、採用に関するSNS発信。

すべてに「理念を先に、結論を後に」という順番が求められます。

まとめ 今回の炎上が飲食業界に示した3つの教訓

日高屋の炎上は、表面的には言葉の問題ですが、その奥に飲食業界の本質的な課題が見えます。

今回の炎上から学ぶ3つの教訓
教訓内容
① 飲食業の人材問題はもう他人事ではない特定技能停止で全飲食店が採用構造の見直しを迫られている
② 「語る順番」が炎上を左右する結論より先に理念・価値観を語ることが必須
③ 謝罪は「事実の開示」で終わらせてはいけない「なぜそうしているのか」という価値観まで語って信頼は回復する
たかし
たかし

大手の動きから「飲食業界全体の流れ」を読む習慣が、長く続く個人店には必要だと思う。

はな
はな

業界ニュースって、読み方次第で自分のお店の経営のヒントになるんだね。

飲食業の人材問題は今後さらに深刻化します。大手の動きを自分の店に引き寄せて読む視点が、生き残りの鍵になります。

今日も同じ飲食の世界で、一緒にがんばりましょう。


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