
定食チェーンの勝ち方が、根本から変わりました。
じつは外食全体は2025年11月まで48か月連続で売上が前年を上回っているのに、定食チェーンの中では勝ち組と負け組の差が急速に広がっています。
なぜなら、コスト高騰・客層の変化・価値観の変化という3つの構造変化が一気に押し寄せたから。
私は19歳から飲食の世界に入り、居酒屋を独立開業して18年目の現役店主で、チェーンの動きは常に自分の店の参考にしてきました。
この記事では、日高屋・やよい軒・大戸屋という定食チェーン3社の現在地から、新しい勝ち筋を読み解いていきます。
この記事を読むと、「低価格×大盛り」が通用しなくなった理由と、個人店でも使える集客の考え方がわかるはず。
結論は、勝負を分けるのは「安さ」ではなく「誰のための、どんな価値の定食か」という設計です。

定食って「安くてボリュームがある」のが正解だと思ってたけど、違うの?

それが昔の正解で今はもう通用しない。勝ってる店は、まったく別のやり方をしてるんだよ。
- 定食チェーン業界で起きている「異変」の正体
- 日高屋・やよい軒・大戸屋3社の戦略の違いと現在地
- 「低価格×大盛り」が通用しなくなった理由
- 勝ち組に共通する新しい定食の勝ち筋4つ
定食チェーンの勝ち筋が変わった3つの理由|コスト高騰と客層変化
まずは、なぜ定食チェーンの勝ち方が変わったのかを整理しましょう。
背景には3つの構造変化があります。
コスト高騰で定食チェーンの原価が悪化した背景
帝国データバンクによると、2025年の飲食料品値上げは約2万609品目。
コメ・牛肉・食用油・野菜のすべてが上がり続けています。
定食はその性質上、1食で複数の食材を使います。だから原価率への影響が他の業態より大きい。
総菜を選んで買うカフェテリア型のチェーンでは、食品ロスも重なって大幅な減益となった例もあります。
定食チェーンの客層が男性中心から多様化した理由
コロナ前、定食チェーンの主力は駅前でランチをとるビジネスマン。男性・単身が中心でした。
それがコロナ後、在宅勤務の普及でロードサイド需要が拡大し、女性やファミリーが参入してきます。
ぐるなびの調査では、ランチで一人外食をする人の割合は58.2%。「おひとりさま外食」が世代や性別を超えて広がり、一人でも入りやすいかどうかが重要な集客要素になりました。
消費者の価値基準が「安さ」から「納得」へ変化
物価高が長期化したことで、消費者の判断軸そのものが変わりました。
「安いから行く」ではなく「納得できる価値があるから行く」へ、価格ではなく価値で選ばれる時代になったのです。
日高屋・やよい軒・大戸屋に学ぶ定食チェーンの戦略比較
では、定食チェーン3社は実際にどう動いているのか。
それぞれの戦略と業績を見ていきましょう。
日高屋の戦略|3年連続最高益を支える4つの強み
ハイデイ日高は、定食チェーンの中でも異彩を放つ存在です。
強さの理由は4つ。1つ目は2020年の全席禁煙化という先手です。
男性客が80%を占めていた客層が変わり、女性・ファミリーが参入。男性比率は65%程度まで下がりました。
2つ目は、駅前一辺倒からロードサイド併用への出店転換。
3つ目は全店へのタッチパネル導入で、人件費を抑えながら回転率を高めたこと。
4つ目は戦略的な低価格です。
率が50%を超えるメニューも集客のフックとして意図的に投入し、セントラルキッチンとドミナント出店の効率で赤字にしない構造を作っています。
やよい軒の戦略|テイクアウトで女性客を取り込む
やよい軒はもともと「安さ+ご飯おかわり自由」で男性客を集めるモデルでした。
転機はテイクアウト。コロナ禍に弁当を定食スタイルで提供する取り組みを始めたところ、女性客が急増しました。
その結果、男女比は7対3から5対5へ。
売上の時間帯も昼6対夜4から、昼4対夜6へと逆転しました。
「昼のビジネスマン向け定食屋」から「夕方以降に女性も使える定食屋」への転換、客層と時間帯を同時に広げた好例です。
大戸屋の戦略|コスト構造改革で価値の定食を守る
2020年にコロワイドに買収された大戸屋は、当初の騒動を経てコスト構造の改革でV字回復を遂げました。
原価率は2023年3月期の43.5%から40.5%へ改善。
営業利益率も2019年3月期の1.6%から2024年3月期は5.9%まで回復しました。
カギは、コロワイドグループの調達力を活かした仕入れ・物流の集約。
そして「手作り感」というブランドを守りながらの効率化です。
かつて「割高」と言われた大戸屋が、他チェーンの値上げによって相対的な価値感を回復したという点も見逃せません。

3社とも値段を下げて勝ってるわけじゃなく客層を変えたり、仕入れの仕組みを変えたりしてるんだよ。

同じ「定食チェーン」でも、勝ち方がそれぞれ違うんだね。
定食チェーンの新しい勝ち筋4つ|旧モデルとの違い
3社の動きを並べると、勝ち組に共通する「新しい勝ち筋」が見えてきます。
4つのポイントに整理しました。
勝ち組の定食チェーンに共通する4つの戦略
勝っているチェーンは、次の4つを実践しています。
| 勝ち筋 | 内容と代表例 |
|---|---|
| ①客層の拡張 | 男性一辺倒から女性・ファミリーへ(日高屋・やよい軒) |
| ②DX・効率化 | タッチパネルや仕入集約で人件費削減(日高屋・大戸屋) |
| ③出店戦略の転換 | 駅前一辺倒からロードサイド併用へ(日高屋) |
| ④構造で戦う | 仕入れ・物流・CKでコストを下げる(大戸屋・日高屋) |
共通するのは、価格を下げて消耗するのではなく、誰に来てほしいかと、どう効率化するかを設計している点です。
定食チェーンの旧・勝ち筋と新・勝ち筋を比較
かつての勝ち方と、今の勝ち方を並べてみましょう。違いは一目瞭然です。
| 旧・勝ち筋 | 新・勝ち筋 |
|---|---|
| 低価格で客を集める | 価値で客を集める |
| 男性・ビジネスマン向け | 女性・ファミリー・一人客向け |
| 量(大盛り)で差別化 | 健康・体験・居心地で差別化 |
| 駅前立地一択 | 駅前+ロードサイド併用 |
| 価格競争 | コスト構造の改革 |
「低価格×大盛り×回転率」という古い方程式は、もう万能ではありません。
価値の設計こそが、これからの定食チェーンの勝ち筋です。
定食チェーンの勝ち筋から個人飲食店が学べること
この変化は、チェーン店だけの話ではありません。
個人店も同じ波の中にいます。最後に、自分の店に持ち帰れる学びを整理します。
居酒屋を経営していると、昼の定食は「やるか、やらないか」でいつも迷います。今回の3社を見て気づいたのは、定食の勝ち負けは価格ではなく客層設計で決まるということ。「誰が、いつ来てくれるか」を定義せずに「おいしいものを作ればいい」と思っていた時期は、集客に苦労しました。
「誰に・いつ来てほしいか」を先に設計する
日高屋は禁煙化で「誰に来てほしいか」を、やよい軒はテイクアウトで「いつ来てほしいか」を設計しました。
個人店も同じです。ターゲットと利用シーンを先に決めてから、メニューや内装を組み立てる。順番を逆にしないことが大切です。
価格ではなくコスト構造で利益を守る
大戸屋が仕入れと物流の集約で利益率を回復させたように、利益は値付けだけで決まるわけではありません。
仕入れ先の見直し、仕込みの効率化、ロスの削減。裏側の構造を整えることが、値上げに頼らない経営につながります。

規模は違っても、本質は同じ。チェーンの動きは俺たち個人店の教科書だよ。

大きいお店の話だと思ってたけど、自分の店に置き換えて考えられるんだね。
まとめ|定食チェーンの勝ち筋は「価値設計」が鍵
定食チェーンの異変が示すことを、最後に整理しておきましょう。
量と安さで客を集める時代は終わり、誰のための・どんな価値の定食かを設計した店が勝つ時代になりました。
定食チェーンの勝ち筋は「低価格×大盛り」から「価値の設計」へ。客層を広げ、効率化を進め、コスト構造で戦う。この3社の動きは、規模を問わずすべての飲食店の教科書になります。
| チェーン | 勝ち筋のポイント |
|---|---|
| 日高屋 | 禁煙化とDXで「誰でも来やすい店」に |
| やよい軒 | テイクアウトで「夕方の女性客」を掘り起こす |
| 大戸屋 | コスト構造改革で「価値の定食」を守る |
自分の店でできることは、まず「誰に・いつ来てほしいか」を紙に書き出すこと。そこから逆算すれば、やるべきことが見えてきます。
客層設計や原価管理をもっと体系的に学びたい人は、飲食店向けのマーケティング本やPOSレジの客層分析機能を一度試してみるのもおすすめ。数字で客層が見えると、メニュー作りの精度が上がります。

安さで勝負する時代は終わり、価値を設計できる店が生き残る。今日も同じ飲食の世界でがんばっていきましょう!


