飲食店のメニュー設計で利益が決まる 原価率より「粗利」で考えるべき理由

「売り上げはあるのに、なぜか手元にお金が残らない。」

このような悩みを抱えている経営者は多く、その原因はメニューの作り方にあるの場合がほとんど。

なぜなら、どれだけ集客に成功しても、利益を生まないメニュー構成のまま営業し続ければ、売上が上がるほど損失が積み重なる構造になってしまうからです。

私は19歳から飲食業に入り居酒屋を独立開業してから18年、現役の店主として今も現場に立ち続けています。

この記事では、開業前に知っておくべき「儲かるメニュー設計の全技術」を、粗利の考え方からメニューエンジニアリング・ABC分析まで、実践レベルで解説します。

この記事を読むと、メニューを「感覚」ではなく「数字と戦略」で設計できるようになります。

結論、原価率だけを見ているうちは、絶対に利益は最大化できません。

必要なのは「粗利額」で考える習慣と、メニューを戦略的に設計する技術です。

この記事を読んでわかること

・「原価率」と「粗利額」の違いと、なぜ粗利で考えるべきか。
・集客メニューと利益メニューを使い分ける設計の考え方。
・メニューエンジニアリングで商品を4つに分類する方法。
・ABC分析でCランクを切り捨てると利益が増える理由。
・値上げを成功させるメニュー改定のテクニック。
・2025年の飲食店を取り巻く原価高騰の実態データ。

はな
はな

メニューを考えるときって、まず原価率を計算するけど間違いなの?

たかし
たかし

間違いではないよ、でも原価率だけ見てメニューを作ると、確実に「儲からない店」になるんだ。原価率が低くても、粗利が少ないメニューってのは存在するんだよ。

飲食店の仕入れ価格上昇に直面している現実

メニュー設計を語る前に、まず今の環境を正確に把握しておく必要があります。

感覚だけでなく、数字で現状を見てください。

食材コスト高騰は一時的ではない 円安・エネルギー・人件費の三重苦

2025年現在、飲食店の94.6%が仕入れ価格の上昇に直面しています。

(帝国データバンク調査)

これは一時的な物価上昇ではありません。

円安・エネルギーコスト・人件費の上昇が複合的に絡み合っており、「少し待てば落ち着く」という性質の問題ではないのが実態です。

【2025年・飲食店の原価実態データ】
・仕入れ価格が上昇していると回答した飲食店:94.6%(帝国データバンク)。
・前年比10%超の仕入れコスト増を経験:飲食店の約7割(飲食店ドットコム調査)。
・2024年以降の平均原価率の実態:約36%(従来の適正値は28〜33%)。
・FL比率の健全ライン:60%以内(食材費+人件費 ÷ 売上)。

原価率30%以内の常識はもう通用しない 平均36%時代の思考法

かつて飲食業界の常識だった「原価率30%以内に収めろ」というルールが、現実と乖離し始めています。

2024年以降、多くの飲食店で平均原価率は36%前後まで上昇。
参照:日本政策金融公庫の2023年度『小企業の経営指標調査』

従来の感覚のままメニュー管理をしていると、知らないうちに赤字構造に陥っている可能性があります。

だからこそ、開業前の段階で「原価率」より深い思考体系を身につけておくことが必要なのです。

はな
はな

36%って、かなり高いんだね。それでも黒字にできてる店って、どこが違うの?

たかし
たかし

メニューを「設計」してる店だよ。原価が上がっても、高粗利の商品をうまく組み合わせて全体の利益を確保できるからね。

飲食店が儲かるメニューは「原価率」より「粗利額」で考える

儲かるメニュー設計の第一歩は、思考の軸を「原価率」から「粗利額」に切り替えることです。

この違いを理解していない限り、どれだけ頑張っても利益は最大化できません。

原価率が低くても儲からないメニューがある

具体的な数字で見てみましょう。

メニュー販売価格原価原価率粗利額
コロッケ600円120円20%480円
特製ラーメン950円380円40%570円

コロッケの原価率(20%)は、ラーメン(40%)より圧倒的に低い。

しかし1杯あたりの粗利額はラーメンの方が90円高いのです。

「原価率が低い=儲かる」ではなく、「粗利額が高い=儲かる」

この視点の転換が、メニュー設計のすべての出発点です。

粗利額・粗利率の計算式で全メニューを数字で並べ直す

開業前の段階で、設計予定のメニュー全品について以下の計算を行ってください。

【粗利の計算式】
粗利額 = 販売価格 ー 食材原価
粗利率 = 粗利額 ÷ 販売価格 × 100(%)

原価率ではなく、粗利額・粗利率の高い順にメニューを並べ直すと、本当に推すべき商品が見えてきます。

「集客メニュー」と「利益メニュー」を分けて設計する

儲かっている飲食店が必ずやっていること。

それはメニューを次の2種類に意図的に分けて、組み合わせる設計です。

種類役割特徴
集客メニュー
(フロントエンド)
来店動機をつくる原価率がやや高くてOK。「あの店の〇〇が食べたい」と思わせる看板商品名物料理・季節限定品・インスタ映え商品
利益メニュー
(バックエンド)
粗利を積み上げる原価率が低く、安定して利益を生む。接客や配置で注文を促しやすいドリンク・サイドメニュー・デザート

集客メニューで席を埋め、利益メニューで利益を積み上げる。

これが繁盛店の基本構造です。

はな
はな

なるほど!名物料理で来てもらって、ドリンクやサイドで利益を確保するってことなんだね。

たかし
たかし

原価率20%で粗利480円。100人に頼まれたら48,000円の粗利が積み上がる。そこに名物料理を絡ませて客単価を上げるんだ。

メニューエンジニアリングで商品を4つに分類する

粗利の考え方を身につけたら、次は全メニューを戦略的に分類する手法を使います。

これが「メニューエンジニアリング」です。

粗利と注文数の2軸でメニューを仕分ける

コーネル大学が開発したとされるこの手法では、すべてのメニューを「利益貢献度(粗利の高さ)」と「顧客支持度(注文数の多さ)」の2軸で分類します。

ゾーン名粗利注文数対処法
スター(Stars)最高の扱いを。品質維持、メニューの目立つ位置に掲載。絶対に手を抜かない
プラウ(Plows)注文は多いが利益が薄い。価格見直しか原価削減を検討する
パズル(Puzzles)粗利は高いのに売れていない。接客での推奨、メニュー内での見せ方を改善する
ドッグ(Dogs)廃番・縮小を検討。メニューの「引き算」が利益を生む

儲からないを残す危険性「ドッグ」を切り捨てる経営判断の重要さ

多くの開業予定者が最初に躊躇するのが、メニューの削減です。

「せっかく作ったレシピを消すのはもったいない」「お客様の選択肢を減らしたくない」。

この感情は理解できますが、現実は逆です。

ドッグを放置しているほど、仕込みのコスト・廃棄ロス・スタッフの教育時間が無駄に消費されていきます。

メニューの「引き算」は、利益を増やすための積極的な経営判断です。

個人・中小飲食店のフードメニューは30〜50品程度が一般的な上限の目安です。それ以上に増やすと、仕込みの複雑化・廃棄ロス増大・コンセプトのぼやけ・スタッフ教育コストの増大につながります。開業時点でメニューを絞ることは、戦略的選択です。

粗利が高いのに売れない「パズル」を育てると利益が一気に伸びる

注目してほしいのがパズルゾーンです。

粗利は高いのに、なぜか注文数が伸びていない商品、これはメニューの見せ方や接客が原因であることがほとんどです。

・メニュー表の目立つ位置に移動する

・スタッフが口頭で「これ、おすすめですよ」と一言添える

・写真やPOPで訴求力を高める

パズルを育てるだけで、メニューを追加せずに粗利を大きく伸ばすことができます。

飲食店のABC分析で不要な商品を整理する

メニューエンジニアリングと並んで使えるのが「ABC分析」です。

こちらはより簡単に、売上データだけでメニューを仕分けられます。

A・B・Cランクへの分け方と判定基準

全メニューを売上高または注文数の多い順に並べ、上位から累計でグループ分けします。

ランク累計売上の割合対応方針
Aランク累計70%を占めるメニュー群最優先で品質・原価を管理。看板商品として磨き続ける
Bランク次の20%を占めるメニュー群Aランクに育てる施策を打つか、現状維持か判断する
Cランク残り10%のメニュー群廃番・縮小を検討。在庫・仕込みの無駄を整理する

Cランクメニューを削除すると利益が上がる理由

Cランクの商品は、売上全体の10%しか貢献していないにもかかわらず、仕込み・在庫管理・廃棄のコストを他の商品と同じように発生させています。

「売れないメニューほど、店の体力を消耗させる」のです。

Cランクを整理してメニューをシンプルにすることで、スタッフの動きがよくなり、仕込みの精度が上がり、廃棄ロスが減ります。

結果として、残ったAランク・Bランクの商品の品質が上がり、お客様の満足度も高まる。

「引き算」が「足し算」より利益を生む。これが繁盛店の逆説です。

はな
はな

開業前って、いろんなメニューを作りたくなっちゃうんだけど、最初から絞った方がいいってこと?

たかし
たかし

看板になる1〜2品を絶対的な強さに育てることに集中する。後から増やすのはいつでもできるよ。

値上げを成功させる「メニュー改定」という発想

原価高騰の環境下で、避けて通れないのが値上げです。

しかし値上げには技術が必要で、やり方を間違えると、お客様が離れる原因になります。

値上げで客が離れる店・離れない店の決定的な違い

失敗する値上げには共通点があります。

「同じメニューの価格だけ上げる」という方法です。

お客様に「値上がりした」と明確に認識され、心理的な抵抗が高まります。

一方、成功する値上げは「メニュー改定」として新鮮さを演出します。

失敗パターン成功パターン
同じ商品の価格だけ変える盛り付けや食器を変えて「リニューアル」として打ち出す
値上げ理由を説明しない食材の品質を一部グレードアップしてストーリーを加える
単品の価格が上がった印象を与えるセット構成を変えて「総額」で判断してもらう

長く売れ続けるヒットメニューの5条件

長く売れ続けるメニューには、共通する5つの要素があります。

開業前の段階で、この5つを意識してメニューを設計してください。

① 食材の組み合わせに独自性がある
既存の料理カテゴリに収まりながらも、「このお店だから」という一工夫がある商品。

② 原価と販売価格のバランスが成立している
「美味しいけど儲からない」商品は長続きしません。食材コストが上がっても粗利を確保できる価格か、事前に検証する。

③ 再現性があり、スタッフ誰でも同じ品質で出せる
レシピを数値化・マニュアル化することが前提です。属人的な技術に依存するメニューは、スタッフが変わった途端にクレームの原因になります。

④ ストーリーが語れる
産地・生産者・こだわりの調理法など、接客時に話せる「背景」があると単価への納得感が高まります。

⑤ SNSでシェアしたくなる要素がある
ビジュアル・驚き・希少性のどれか一つでも持たせることで、お客様が自然に拡散してくれる広告費ゼロの集客装置になります。

はな
はな

値上げって怖いイメージがあったけど、メニュー改定って考えるとちょっとポジティブになれる気がしてきた。

たかし
たかし

値上げは「お客様への裏切り」じゃない。原価が上がった現実に対して、店が正直に向き合った結果だよ。

まとめ 飲食店開業前に身につけておくべきメニュー設計の5ステップ

この記事のポイントまとめ

・原価率ではなく「粗利額」でメニューを評価する。
・集客メニューと利益メニューを意図的に設計する。
・メニューエンジニアリングでスター・プラウ・パズル・ドッグに分類する。
・ABC分析でCランクを定期的に整理し、メニューを絞り込む。
・値上げは「メニュー改定」として演出し、心理的抵抗を下げる。
・開業時のメニュー数は30〜50品以内に絞り、看板1〜2品を徹底的に磨く。

ステップやることポイント
STEP 1全メニューの粗利額を計算する原価率ではなく粗利額で優先順位をつける
STEP 2ABC分析でランク分けするCランクの整理でシンプルな構成にする
STEP 3メニューエンジニアリングで4分類するスターを磨き、ドッグを切り、パズルを育てる
STEP 4集客・利益メニューを設計する看板1〜2品を集客軸に、高粗利商品を横に並べる
STEP 5値上げを「メニュー改定」として演出する価格感度より価値感度を上げることを意識する

メニューは「作りたいものを並べる場所」ではありません。

「どう稼ぐかを設計する場所」です。

料理への情熱は絶対に必要でが、情熱だけでは店は続かないです。

情熱を数字で裏打ちする設計があってこそ、長く店を続けることができます。

はな
はな

メニューって、開業してからじゃなくて、開業前から設計しておくものなんだね。勉強になった!

たかし
たかし

メニューは経営の設計図だよ。今日話した内容を頭に入れた上で、自分の店のメニューを組み立てみよう!。

今日も同じ飲食の世界でがんばっていきましょう!

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