
「メニューを増やせば売上が上がる」
飲食店を経営しているとつい、そう考えてしまいます。
季節メニューを追加したり、お客様のリクエストに応えてメニューを増やしたりしていくうちに、気づいたら何十種類ものメニューが増えていた。
そんな経験をしているオーナーは非常に多いです。

メニューを増やせば売上が上がると思ってたけど、ちがうの?。

それ、逆なんだよ。メニューを増やすほど利益は減っていくんだ。
私は19歳から飲食業に入り、15坪25席の居酒屋を18年間経営しています。
開業当初、私もメニューを増やしていた時期もありました。
しかし数字で見直したとき、多くのメニューが利益を生むどころか、原価率を悪化させていることに気づきました。
この記事では、飲食店の利益を上げるための正しいメニューの作り方を、現場18年の経験をもとに解説します。
・メニューを増やすことが経営リスクになる理由。
・ABC分析を使ったメニューの正しい見直し方。
・削るべきメニューの判断基準と実践方法。
メニューを増やすほど経営が苦しくなる理由

多くの飲食店オーナーが「メニューが多い=お客様の選択肢が広がる=売上アップ」と考えがちです。
しかし実際には、メニューを増やすほど以下のような問題が起きやすくなります。
・食材ロスが増える:使い回しにくい食材が増え、廃棄コストがかさむ。
・オペレーションが複雑になる:スタッフの習熟に時間がかかり、提供ミスも増える。
・お客様が迷う:選択肢が多すぎると逆に注文が減る。
・一品あたりの品質が下がる:すべてのメニューに集中できず、クオリティにムラが出る。

メニューが多いことは強みではなく、経営上のリスクになりやすいんだよ。

お客様のためと思ってやっていたことが、逆効果になっていたんだね。
特に個人店では、仕込みに使える時間も人手も限られて、メニューが多ければ多いほど、一品にかけられる時間と集中力が分散します。
結果として、どのメニューも中途半端なクオリティになり、リピーターが生まれにくくなります。
私の店で実際に起きたことを話すと、開業当初はメニューを増やし続けました。
ある時点でメニューを数えたら50種類を超えていて、調理工程に追われて肝心の接客が疎かになっていました。
そこで一度メニューを大幅に絞った結果、原価率が下がり、提供スピードが上がり、スタッフの余裕が生まれ、接客の質が上がりました。
結果として売上も上がり、利益も増えました。
選択肢が多すぎるとお客様が決められない
心理学の世界では「選択肢が多すぎると人は選べなくなる」という現象が知られています。
飲食店でも同様で、ページ数の多いメニューブックを渡されたお客様は、決まるまでに時間がかかり、結局よく知っているものを注文して終わります。
新しいメニューへの挑戦が起きにくくなるのです。
一方、メニューが絞られているとお客様は選びやすく、スタッフも自信を持っておすすめできます。
「今日はこれがおすすめです」という一言が言える環境が、客単価を自然と押し上げます。
ABC分析で今あるメニューを数字で見直す
正しいメニュー作りの第一歩は、今あるメニューの実態を数字で把握することです。
そのために有効なのが「出数分析」、いわゆる「ABC分析」です。
ABC分析とはなにか
ABC分析とは、メニューを売れ行きと利益貢献度によって3つのグループに分類する方法です。
| 分類 | 特徴 | 対応 |
|---|---|---|
| Aランク | 注文数が多く、利益貢献度も高い | 積極的に推す・品質を守る |
| Bランク | 中程度の注文数・利益 | 改善・強化を検討する |
| Cランク | 注文数が少なく、利益への貢献が低い | 削除を検討する |

Cランクのメニューを思い切って削るのがポイントなんだね。

「このメニューが好きなお客様がいるかも」という思い込みが、ほとんど出ないメニューを残してしまう原因なんだよ。
食材ロスや作業負担が増えるだけのCランクメニューは、Aランクの足を引っ張っています。
ABC分析の具体的なやり方
難しく考える必要はありません。以下の手順で進めてください。
① 1ヶ月分の注文データを集計する(POSレジがあれば自動集計できる)。
② メニューごとの注文数と売上金額を一覧にする。
③ 注文数の多い順に並べて上位30%をA・中間40%をB・下位30%をCに分ける。
④ Cランクの中で「原価が高い」「食材が共有できない」ものを優先的に削除候補にする。
私が実際にメニューを整理したとき、「たまに出るから残しておこう」と思っていたメニューが月に1〜2回しか出ていなかったという事実に気づかされました。
その食材のためだけに仕入れを確保し、使い切れなかった分を廃棄していました。
数字で見て初めて「これは明らかなロスだった」と実感しました。
削るべきメニューの判断基準4つ

ABC分析でCランクに分類されたメニューのうち、どれを削るかの判断基準は以下の4つです。
注文頻度が極端に低い
月に数回しか出ないメニューは存在価値を見直す必要があります。
目安として、週1回以下しか出ないメニューは削除候補として考えてください。
感覚ではなく、必ず数字で確認してください。
思っていたより出ていないメニューが必ず出てきます。
調理に時間がかかる割に利益が薄い

手間がかかるのに利益が薄いメニューは、厨房の時間を奪う「時間泥棒」だよ。
仕込みに手間がかかるのに、売れても粗利が300円しかないメニューより、5分で仕込めて粗利が500円のメニューのほうが経営上はるかに価値があります。
メニューの価値は「売価」だけでなく、「粗利÷仕込み時間」で考える習慣をつけましょう。
他のメニューと食材が共有できない
そのメニューのためだけに仕入れる食材がある場合は要注意です。
使い切れなかった分は廃棄になり、原価率を直接悪化させます。
個人店で理想的なのは、すべての食材が複数のメニューで使い回せる設計です。
私の店では仕入れる食材を決めてからメニューを組む逆算の発想に切り替えました。
その日仕入れた食材をすべて使い切れるメニュー構成にすることで、廃棄ロスがほぼゼロになりました。
スタッフが作り方を覚えていない
スタッフが自信を持って作れないメニューは、提供品質のばらつきを生みます。

味が毎回違うと、お客さんも信頼できなくなるよね。
教育コストが高いメニューは、スタッフの入れ替わりのたびにクオリティが落ちるリスクがあります。
全スタッフが自信を持って提供できるメニューだけに絞ることが、安定した品質の維持につながります。
メニューのカテゴリー比率を整える

メニューを削るだけでなく、カテゴリーのバランスを整えることも重要です。
| カテゴリー | 役割 | 比率目安 |
|---|---|---|
| 看板商品(主力) | 来店動機になるメニュー | 全体の20〜30% |
| サポートメニュー | 主力と一緒に頼まれやすいもの | 全体の50〜60% |
| ドリンク・デザート | 客単価を上げるカテゴリー | 全体の20〜30% |
カテゴリーごとのバランスが崩れていると、注文が一部に偏って厨房オペレーションも乱れやすくなります。
看板商品は絶対に守る
看板商品とは、「あの店に行けばあれが食べられる」と思われるメニューのことです。
個人店の最大の強みは、大手チェーンには真似できない「人間力」と「看板商品」です。
私の店では鮮魚の刺身盛りが看板商品で、これだけは原価率が多少高くても絶対に質を落としません。
看板商品がお客様を連れてきて、サポートメニューとドリンクが利益を作る構造です。

看板商品で呼んで、サポートメニューとドリンクで稼ぐ。これが個人店の利益の作り方だよ。
ドリンクカテゴリーは軽視しない
居酒屋においてドリンクは原価率が低く、利益率が最も高いカテゴリーです。
ビールの原価率は30%~40%程度ですが、ハイボールや酎ハイは15〜20%で作れます。
食事メニューでFL比率を守りながら、ドリンクで全体の利益率を底上げする発想が重要です。
ドリンクの注文を増やすためにできることは、スタッフが積極的に「次のお飲み物はいかがですか」と声をかけること。
これは原価ゼロの売上アップ施策で、意識するだけで客単価が数百円変わります。
メニューを絞り込んだ後にやること
メニューを削減した後に大切なのは、残ったメニューの品質を上げることと、削除したことをお客様に丁寧に伝えることです。
残ったメニューに全力を注ぐ
メニューを削ることで生まれた時間とコストは、残ったメニューの品質向上に全振りします。
仕込みに余裕が生まれれば、盛り付けの丁寧さや食材の鮮度管理が上がります。
お客様が体感できるクオリティの変化こそ、リピーターを増やす最大の要因です。
メニューを絞ったことで「あのメニューがなくなった」と残念に思うお客様もいます。
そのときは「より美味しいものを提供するためにメニューを見直しました」と正直に伝えてください。
理由を伝えれば、ほとんどのお客様は理解してくれます。
むしろ経営に真剣なオーナーとして信頼を得るきっかけになります。
定期的なメニュー見直しを習慣にする
メニューの見直しは一度やれば終わりではありません。

どのくらいの頻度で見直すのがいいの?

季節の変わり目に合わせて3ヶ月に1回が目安だよ。旬の食材も変わるし、お客さんのニーズも変化するからね。
私の店では3ヶ月ごとに出数データを確認して、出ていないメニューを入れ替えています。
日替わりメニューで旬の食材を取り入れつつ、レギュラーメニューは厳選した品数を維持する構成が、安定した経営につながっています。
メニュー数の適正な目安
「では何品くらいが適正なの?」という疑問は当然あります。
業態や席数によって異なりますが、目安として以下を参考にしてください。
| 業態 | フード | ドリンク | 合計目安 |
|---|---|---|---|
| 個人居酒屋(15坪前後) | 30〜40品 | 20〜30品 | 50〜70品 |
| カフェ・ランチ主体 | 20〜30品 | 20〜30品 | 40〜60品 |
| 焼鳥・串焼き専門 | 20〜30品 | 20〜30品 | 40〜60品 |
私の店は現在フード40品・ドリンク50品の合計90品で運営しています。
開業当初の100品超から比べると大幅に絞り込みましたが、売上も利益率も上がりました。
メニュー数が少ないほど仕入れコストが抑えられ、スタッフが全メニューを深く理解でき、一品あたりのクオリティが上がります。
お客様の注文スピードも上がり、回転率の改善にもつながります。
POSレジを導入すると出数データが自動で集計されるため、ABC分析が格段に楽になります。手書きの記録では見落としがちなデータも、レジなら毎日蓄積されます。
まとめ 引き算のメニュー作りが利益を生む
メニュー作りで大切なのは「増やす」ことではなく「削る」ことです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| メニューが多いと経営が苦しくなる | 食材ロス・オペレーション複雑化・品質低下を招く |
| ABC分析で数字を把握する | 感覚ではなくデータで判断する |
| Cランクを削る基準は4つ | 注文頻度・利益・食材共有・習熟度 |
| カテゴリー比率を整える | 看板商品・サポート・ドリンクのバランスが重要 |
| 3ヶ月に1回見直す | 定期的な改善が安定経営につながる |
メニューを削ることへの勇気が、利益を生む店づくりの第一歩です。
18年間経営を続けてきた中で実感していることがあります。
閉店していく店のほとんどは、料理の腕がないのではなく、数字を見ていないことが原因で、メニューの出数を毎月確認するだけで、経営判断の質は大きく変わります。
「なんとなくこのメニューは出ている気がする」という感覚と、実際のデータは必ずズレています。
数字を信じて、勇気を持って削る。
この繰り返しが、長く続く店を作ります。

まず今月の出数データを見てみて。月に1回も出ていないメニューが必ずあるから。

引き算の発想に変えるだけで、お店の利益体質が変わるんだね。
数字を見る習慣とメニューを削る勇気、この2つがあれば個人店の経営は必ず安定します。
今日も同じ飲食の世界で、一緒にがんばりましょう!



