
独立開業で初期投資をできるだけ抑えるため”居抜き物件”を探している人は多いと思います。
気になる店舗情報を見てワクワクしながら
「実際どうやって選べばいいの?」と迷っていませんか?

造作譲渡とか名前からして、むずかしそう。

きちんと理解すれば、いい仕組みだからね。
居抜き物件の最大の落とし穴は「造作譲渡金」の正体がわからないまま契約してしまうこと。
造作金は妥当性がわかりづらく、あとから修理費や撤去費が大きくかかる場合があります。
“残された設備や内装”に価値があるように見えて、 実際は老朽化によって再利用できないことも。
私は19歳で飲食の世界に入り、今では居酒屋を独立開業して18年目になります。
一つの店は人手不足で閉店しましたが、 これまでに居抜き物件を活用して2店舗を出店しました。
・造作譲渡の基本的な仕組み。
・内見で注意してみるチェック項目。
・契約前に確認する需要事項。
私自身が体験した失敗談、注意すべき点をわかりやすく解説していきます。
居抜き物件は見た目のキレイさ、安さに惑わされず “本来の価値”を見極めることが大切です。
居抜き物件とは?メリットと基本の仕組み
居抜きとスケルトンの違いと考え方
| 特徴 | |
|---|---|
| ・居抜き物件 | ・前の店舗の内装・設備が残っている ・初期費用が比較的安く済む |
| ・スケルトン物件 | ・何もない基本コンクリ打ちっぱなしの状態 ・内装・設備を一から作るため初期費用が高額 |
居抜き物件とスケルトン物件の最大の違いは、 “自由度と初期費用のバランス” にあります。
居抜きは、前テナントの造作(内装・設備・配管など)を活用できるため、初期費用を大きく抑えられるのが魅力です。
一方で、スケルトンは何もない状態からすべてを作り上げるため、自由度は高いですが、その分コストが大きくかかります。

だから個人店の開業では圧倒的に居抜きが多いよ。
初期費用を抑えて早く開業できる理由
スケルトン物件は基本的に柱とコンクリートしかないので、出店に必要な設備を一から施工する必要があり、費用が大きく膨らみます。
- 水道・電気・ガス、吸排気工事費。
- 調理機材、椅子、テーブル等の備品。
- 内、外装工事費。
反対に、居抜きは既存の造作を生かせば、厨房設備・ダクト・グリストラップ・エアコンまで既にそろっています。
工期が短縮され、開業スピードも早くなり、前家賃も抑えられます。
同じ業態の店を始めるなら、排気設備やカウンター配置をそのまま活かせるので、数百万円単位で初期費用を削減できます。

こんなにお得なんだったら、居抜きが一番だね!

それが、単純にそうでもないんだよ。
ただし、既存の間取りや設備位置が固定されているため、自分の業態に合わない場合はかえって費用がかかるケースもあります。
さらに、全く別業種のカフェを同じ物件で開こうとすると、水回りの位置や配線が嚙み合いません。
結果的に大規模な改修が必要になり、居抜きなのに余計に費用がかかる事になります。
居抜き=コスト重視・スピード開業型。
スケルトン=自由設計・理想追求型。
正解はなく、あなたの資金力・業態・開業スピードによって最適解は変わります。
まずは自分が求める店づくりの優先順位を明確にして、物件選びをスタートしましょう。
造作譲渡とは?店舗コストを左右する重要ポイント
造作譲渡の基本的な仕組み
造作譲渡とは
必要な設備を一から買いそろえなくて済むため、初期費用を大きく抑えられるのが最大のメリットです。
ただし、確実に使用できるわけではありません。

もちろん、タダで利用できるわけじゃないからね。

買い取らないといけないんだね。
造作譲渡は、前テナントが提示した譲渡金額(造作譲渡料)を支払い、新たな借り手が買い取るという形で成立します。
つまり、あなたが借りる店舗の内装や厨房機器は、大家ではなく前テナントの持ち物ということ。
そのため、どの設備を引き継ぐか・不要なものを外すかを話し合い、必要であれば金額交渉も行います。
ただし、交渉の最終判断は前テナント側にあるので、条件が折り合わない場合はその物件自体を契約できません。
前テナントでピザ窯や大型オーブンが残っているが、こちらは和食業態なので機材が不必要な場合「厨房機器は引き継がないので譲渡金を下げてほしい」と交渉する。
ただし、人気立地や状態の良い店舗では他の希望者も多く、売り手が譲歩しないことも良くあります。

僕の時は、明らかに使用できない機材も値段に入れられたからね。
このように場合によって、「場所代」として提示してくるケースも。
造作譲渡は、前テナントとの合意で成り立つ取引なので、設備の価値を冷静に見極めて必要なもの・不要なものを整理する事。
”この価格でなら納得できる”というラインを自分の中で決める。
“譲渡条件の交渉”が物件取得の分かれ道になります。
造作譲渡料の相場と見極め方

出典: 飲食店ドットコム(inuki-info.com) より引用
造作譲渡料は坪数・立地・設備状態によって値段は大きく変わります。

造作代ってこんなに高いんだ!

データではそうだけど、実際の感覚では100万前後って感じかな。
ただ、居抜き物件で提示された「造作譲渡料」は、必ず支払うものではありません。
むしろ私は、“支払わない選択肢”を前提に考えるべきだと思っています。
なぜなら、その店舗は「前テナントが挑戦して負けた場所」であることが多いからです。
- 前テナントは少しでも高く造作を売って撤退コストを回収したい。
- こちらは少しでも安く抑えて開業資金に余裕を残したい。
居抜きの交渉は、常にこのせめぎ合いです。
例えば、駅近物件で調理機材・内、外装設備が不備なくそろっていれば、造作譲渡料が500万超円でも長期的に見れば安い投資かもしれません。
もちろん、その物件がもの凄く気に入ったなら、”造作代”というより“場所代”として支払うのもありです。
ここで裏技的な話をすると、前テナントには「退去期限」と言うものがあります。
店を閉め、通常三ヶ月前までに大家さんに退去通告をしなければいけません。
もしその日までに買い手が決まらなければ、自費でスケルトン工事をして退去しなければなりません。
原状回復には100万円以上かかることが多く、売り手にとっては大きな痛手です。
そのため、退去日が近づくほど”多少安くても譲りたい”という心理が働きます。
このタイミングを狙い、あえて契約を急がずに価格交渉を有利に進めるのもひとつの戦略です。
ただし、当然ながら他の買い手が先に決めてしまうリスクもあります。
この物件は絶対に逃したくないと思うなら、多少の造作料を払ってでも早めに決断するのも一つの選択です。

最初の店舗は、大家さんが人柄で決めたいとの意向の方で、造作金が0円だったよ。
造作譲渡料に「正解の値段」はありません。
大切なのは、“この物件なら戦っていけるか”という視点で考えること。
最後は自分の直感も大事にしましょう。
譲渡品の「価値があるもの/ないもの」の違い
造作譲渡で最もトラブルになりやすいのが、“何に価値があるのか”の認識のズレです。
前テナントにとっては
- まだ十分に使える設備。
- 価値のある備品類。
- こだわりの装飾、レイアウト。
だとしても、こちらから見れば、”修繕費のかかる古い設備一式”にしか見えない事の方が多いです。

ある内見の時は、このドアは特注だとか、テーブルは一点ものだとか言って高値を言ってきたよ。

ホント価値観は人それぞれだからね。
つまり、造作の価値はあなたの業態に必要かどうかで決まります。
あくまで、前テナントが使っていた設備なだけで、あなたの店で必ず活かせるとは限りません。
厨房レイアウト・カウンターの高さ・ダクトの位置などは、業態やメニューによって最適な形がまったく異なります。
特に注意すべきは冷蔵庫や冷凍庫などの大型機器。
- メーカーで修理部品が残っているか。
- 壊れた際の廃棄代はいくらかかるか。
- 新品との差額がどの程度あるか。
型番を調べれば製造年やメーカーの保守対応がわかるので、必ずチェックして確認しましょう。
古い型式の場合、見た目がきれいでも電気代が高く結果的に新品を買ったほうが安い事もあります。

造作で大型冷蔵庫を引き継いだけど一年で壊れたのは、完全に失敗だった。
もったいないから使うではなく、“必要だから残す”。
使えないゴミに、大切なお金を使わないように。
実際の内見で注意するポイント
営業に必要な広さ動線を確認する
まず見るべポイントは、広さと動線です。
どんなに立地が良くても動線が悪ければ営業効率が落ち、売上に直結します。
業態によっての調理器具の配置・仕込み作業・提供方法がまったく違います。
居酒屋とカフェではドリンクの種類も在庫量も違い、必要な冷蔵庫の数や棚の面積も変わります。
提供皿やグラスをどこに置くか、調理から配膳までのルートは人が重ならないか。

オーダーを提供する度、人とぶつかるようじゃ困るもんね。
お客様が入店してから退店するまで流れイメージすること。
- 客席の椅子を引いた時でも余裕のある通路。
- 提供する料理を一時的に置く場所。
- 下げものを置いていくスペース。
小さな不便が積み重なると、結果的にオペレーション全体を圧迫します。
また、前テナントが開業時に内装工事の前に大型機器を搬入してる場合、壁やドアを壊さないと通れない場合があります。

まさに、大型冷蔵庫を交換する時に通れなくて追加工事しました・・・。
これは体験しないと気づけない失敗談ですので、ぜひ気を付けて下さい。
動線を見る際は人の動きだけでなく、物の出入りもシミュレーションする事も必要です。
- 調理・配膳・洗い場・トイレ・お会計の動線が交差していないか。
- 客席の通路幅・テーブル間隔・椅子を引いたときの距離。
- 大型機器の搬出入経路が確保されているか。
水回り・ガス・電気設備の老朽化リスク
居抜き物件を選ぶ際に、見落としやすく痛い出費になるのが“老朽化が原因の設備不良”です。
特に水回り・ガス・電気は、営業に直結するライフライン。
見た目がきれいでも中身が古いと、開業後にトラブルが発生して営業停止になることもあります。
水道・ガス・電気の配管、配線が決まっていて、基本はその位置を前提に機材配置をします。
多少の増設は可能ですが、床を掘ったり壁を壊したりするような工事では、追加で数十万単位かかる場合もあります。

開店したあとなら、余計に痛い出費だね。
業務用の機材を使う場合は”動力(200V)”が入っているか必ず確認する事。
動力がないと、業務用エアコンや洗浄機が正常に作動しません。
特に注意したいのが、“見えない場所”のトラブルです。

なぜかシンクの下にコンセントがあって、水がかかって営業中に漏電して店内まっ暗い!
古い店舗だと、想定外の場所に配線が通ってたりするので良く確認しておく事です。
グリストラップの下水は、定期的に高圧洗浄をしていないと臭いもでて、詰まりの原因になります。

マンションの合流する配管がつまって、水が流れなかった事もあるよ。
店舗だけでなく、建物自体の管理不足での事故もあるので大家さん側にも定期メンテナンスの有無も確認しておいた方が無難です。
こうした部分は内見時には見えないので、設備業者に同行してもらいチェックしてもらいます。
空気の流れと空調設備の確認
店内を流れる空気の向き・風量も大事な確認項目で、実際の店舗に行かなければわかりません。
ここを軽視すると
- 煙が客席に充満する。
- 吸気が強すぎてドアが開かない。
- 特定の場所だけ夏は暑く、冬は寒い。

たしかに、ドアがめちゃくちゃ重いお店あるもんね。
どんなに料理が美味く、接客が良くても店内環境が悪い店では、不満がたまり客足は遠のきます。
また、トイレや客席の換気扇が機能していないと、匂いや湿気がこもり、店全体の印象が悪くなる原因に。
建物の老朽化や建付けによって隙間風や害虫の侵入経路になります。
パッと見ではわからない場合が多いので、実際に空調設備を起動して確認する事。

調理場のダクトが音は大きいのに吸いが弱くて、客席へ煙が流れて大変だったよ。

トイレも換気が悪くて、熱や湿気がこもってたね。
実際の営業を想定して、すべての機材を同時に使用して確かめるようにして下さい。
設備同士が干渉しあって個々の性能を低下させてしまう場合もあります。
譲渡契約前に確認する3つの注意点
リース・レンタル品の有無を必ず確認する
居抜き契約で意外と多い落とし穴が、リース・レンタル品の引き継ぎトラブルです。
冷蔵庫や製氷機、食洗機などの中には前テナントがリース契約を結んでいた機器があり、
そのまま引き継ぐと、リース料・保守料まで負担することになります。

そんな事あるの?

滅多にない事だけど、前テナントの人柄次第なところもあるんだ。
実際に確認せず契約してしまうと、解約できず月々の支払いが続いてしまうケースもあります。
前テナント側が意図して言わない場合もあるので、契約前に必ずチェックします。
- リース・レンタル品の有無。
- 契約内容(期間・支払い・所有者)。
- 譲渡対象外とするなら書面で明記。
口約束では通用しません、契約書に残すことが絶対ルールです。
契約書で造作譲渡の範囲と退去条件を明記する
造作譲渡で特に重要なのは、何を引き継ぎ何を引き継がないのかを明確にしておくことです。
曖昧なまま契約を進めると
「内見時にあった機材が消えていた」
「退去時の条件が違った」など、トラブルに発展する可能性があります。

これは困るよね。
また、退去する際の契約も必ず確認する事。
万が一自分が退去する際も、居抜きで売りに出せばいいと考えていてもできない事もあります。

2店舗目の閉店時に造作譲渡で譲るつもりが、飲食店のテナント募集しないと大家さん判断でスケルトン返しになって痛かったよ。
想定外の出費で、原状回復費に100万円以上かかりました。
契約前に以下を必ず確認
- 譲渡対象の設備・什器をリスト化する。(型番・年式・状態を明記)
- 退去時の条件(造作譲渡可か/スケルトン返しか)を契約書で確認。
入居中に大家さんが変わり、方針が変更になる可能性もあるので契約書の内容は重要です。
前テナントのイメージを引き継ぎすぎない
造作をそのまま使うほど、前テナントの悪いイメージを引き継いでしまうリスクがあります。
新しい店として再スタートするなら、外観・内装・雰囲気を自分の色に変えることが大切。
たとえ内装がきれいでも、退店した店舗には”閉店した事実”というマイナスの印象が残っています。

多少変わったとしても、気づかないもんだよね。

以前の店は”同じ場所で撤退した”事実をきちんと受け止める事だよ。
雰囲気を引き継ぎ過ぎると、お客様の中で以前と同じ評価をしてしまう恐れもあります。
看板・照明・色合いなど印象の強い箇所は計画的にリニューアルしましょう。
ここをケチり改装したつもりでも、お客様から見たら”何も変わってない”のと同じです。
- 前テナントのイメージを引き継ぎ過ぎない。
- 照明・内装で変化をつける。
- 最初が肝心、使うところには予算をかける。
居抜きを活かしつつも、自分の個性を表現することが大事。
まとめ│造作譲渡契約で失敗しないための注意点
独立開業の初期投資を抑える方法として居抜き物件は最適で、前テナントの設備を引き継げば、工事費や準備期間を大幅に削減できます。
ただし、最大の落とし穴は造作譲渡金の中身がわからないまま契約してしまうこと。
老朽化した設備や不要な機器まで引き取ると、修繕・改装費が後から重くのしかかります。
【内見チェックリスト】
- 人と物の動線(調理・配膳・レジが交差していないか)
- 水回り(漏水・グリストラップの状態)
- 電気設備(設置場所・動力電気の確認)
- 吸排気・空調の流れ(ドアの開閉・煙や匂いが客席に流れないか)
【契約時に注意すべきこと】
- リース・レンタル品の有無を確認。
- 造作譲渡の対象範囲(何を引き継ぐか)の書面化。
- 退去時の条件(造作譲渡可/スケルトン返し)を契約書に記載。
- 口約束は絶対にNG。書面で残すことが鉄則。
【意識したいこと】
- 前テナントのイメージを引き継ぎすぎない。
- 看板・照明・デザインで個性をだす。
- 居抜きを活かし、自分らしさのバランスを取る。
造作の価値は“使えそう”ことでなく、“利益になるか”で判断します。
内見時は、見た目のきれいさだけでなく営業効率とトラブル回避の両面を考えましょう。

焦らず、出会いを信じて探してね!

一番盛り上がる時期だけど、出だしが肝心!あとは勢い!
居抜き物件は安く始めるためのではなく、長く続けるための手段です。
早く店をだしたい気持ちは良くわかりますが、内見から契約・改装工事まで、ひとつずつ丁寧に判断していってください。
きっと、素晴らしい店と巡り合えます。




